研究課題/領域番号 |
22320068
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐竹 保子 東北大学, 文学研究科, 教授 (20170714)
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研究分担者 |
齋藤 智寛 東北大学, 文学研究科, 准教授 (10400201)
川合 安 東北大学, 文学研究科, 教授 (30195036)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中国文学 / 中国哲学 / 東洋史 / 漢魏六朝 / 世説新語 / 劉孝標 |
研究概要 |
本年度当初にメール会議によって、『世説新語』劉孝標注の底本と参照すべき諸本を再確認し、訳注作成のために必要な文献を再確認しつつ情報を交換した。夏休み前に、昨年度の学術雑誌『東北大学中国語学文学論集』第16号に制限枚数の関係で収録できなかった部分の訳注草稿を、担当者が作成して配信した。それを、夏休み中に検討し、とくに文学・語学に関しては佐竹保子が、歴史学に関しては川合安が、思想・宗教に関しては齋藤智寛が、それぞれメールや口頭によって意見を寄せた。そのため、詩文の読み、時代状況の把握、拠るべき文献等について、微細な箇所に至るまで補足や訂正がなされ、三分野の研究者が糾合した効果が発揮された。 夏休み末に、連携研究者をも含めた意見がまとまり定稿が完成し「『世説新語』劉孝標注訳注稿(三)」と題して、『東北大学中国語学文学論集』第17号に投稿した。全74頁という大部であったが、幸いにも掲載された。 また、この研究会で得られた知見を生かした、論文公刊・研究発表・市民向けの講演などが行われた。たとえば、佐竹論文「謝霊運詩文中的「賞」和「情」」は、『世説新語』の本文と劉孝標注において代表的な文学者として登場する謝霊運に関わる研究であり、『世説新語』における「賞」字を比較対象に取り上げる一節を含む。川合論文「南朝史からみた隋唐帝国の形成」は、南朝の文化的様相を把握する一要素として、『世説新語』本文および劉孝標注所引の漢魏六朝文献を活用している。みやぎ県民大学における齋藤講演「『論語』という方法」は、劉孝標注にしばしば引用される『論語』を取り上げ、注所引の『論語』文献がいかに読まれているかを考慮しつつ、『論語』のより深い読解を企図したものである。 連携研究者の塚本信也は「「佯狂」とその周辺」(集刊東洋学108、2013)を、狩野雄は「匂い立つのか、響くのか」(三国志論集、2012)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「『世説新語』劉孝標注の漢魏六朝文献に関する総合的研究」のうち、劉孝標注の訳注を作成する目的についていえば、訳注作業そのものはおおむね順調に進展しているが、注として付すべき項目と記述量が多すぎて原稿が大部となり、学術雑誌『中国語学文学論集』の許容する制限枚数を超えてしまっている。今回も、該論集全121頁のうち、74頁という半分以上の頁数を占める訳注稿になった。それでも枉げて掲載してもらっているが、訳注作業の分すべてを掲載することは不可能な状態になっている。 また、同研究のうち、劉注所引の漢魏六朝文献を研究する点については、研究代表者・研究分担者・連携研究者がそれぞれに、文学・語学、歴史学、宗教・思想の分野において文献研究を深めており、その一端を、それぞれの論文に活用しつつ披瀝している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究も、ほぼ従来通りに推進していく。 一つだけ問題があるとすれば、当初に予測したよりもはるかに、訳注が大部になっていることである。だがこれは、それだけ詳細な訳注が作成されていることを意味しており、悪いことではない。また、注として付すべき項目や記述量を制限するのは、研究者として誠実とはいえない。ただ、その大部にすぎる訳注を、すべて学術雑誌に掲載するのは難しい。制限字数があるからである。 平成24年度発行の学術雑誌『中国語学文学論集』第17号は、それでも、雑誌の総頁数121頁のうち74頁という半分以上を占める長篇を、敢えて掲載してくれた。今後も、制限字数を超える大部の長篇を枉げて掲載してくれるよう、研究会としてお願いするつもりである。
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