本研究は、敦煌文献中の唱導資料の収集整理を通じ、そこから唐五代時期の仏教儀礼の変化、及びそこから発生したと考えられる芸能、文学の発展について明らかにしようとしたものである。 敦煌文献には、儀礼に用いられた次第や各作法の記録などが多く残される。本研究では、こうした文献資料から後代の文学に関わりが強いとみられる資料を広く調査、分析を行った。とくに、8世紀後半頃から流行したとみられる七言の韻文による浄土讃などの謡い物や、駢儷調の美辞麗句を読み上げる荘厳文などの一連の願文類の分析を通じて、後代の文学文献にもおおくこれらの痕跡が多く残されるとおり、講唱文学の発展に極めて重要な資料であることがわかった。
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