研究課題/領域番号 |
22320070
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
氷上 正 慶應義塾大学, 総合政策学部, 教授 (40228698)
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研究分担者 |
二階堂 善弘 関西大学, 文学部, 教授 (70292258)
太田 出 広島大学, 文学研究科, 准教授 (10314337)
平林 宣和 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (40271358)
千田 大介 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (70298107)
佐藤 仁史 一橋大学, 社会学研究科, 准教授 (60335156)
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キーワード | 皮影戯 / 京劇 / 中国地域社会 / 中国伝統芸能 / デジタルアーカイブ / 相声 / 曲芸 / 無形文化遺産 |
研究概要 |
本年度は、前年度に確立した研究基盤に基づき、本格的な現地調査および研究を進めた。 まず5月下旬に研究集会を開催し、前年度の予備的な調査の結果を検討して、夏期現地調査の調査値と具体的対象を絞り込むとともに、問題意識の共有を図った。それを受けて、8月から9月にかけて本格的な現地調査を実施した。江南地域においては安徽省宣城の皖南皮影戯、北方地域では遼寧省凌源の皮影戯、および北京・天津の京劇・相声などと、それらを取り巻く地域社会に関して、老芸人や地域文化関係者などを対象とした聞き取り調査および文献資料収集を集中的に行った。 下半期には、現地調査および文献資料調査の成果の分析を進め、次年度の現地調査において解明すべき課題を洗い出すとともに、中間的な成果を論文および口頭発表として報告した。それらを通じて、従来必ずしも明らかになっていなかった皖南皮影戯や凌源皮影戯の現状と特色、あるいは伝統芸能をめぐる地域社会や民間信仰のあり方について明らかにした。 一方、デジタルアーカイブの構築に関しては、前年度までに電子テキスト化した『曲芸』誌記事目録、『中国戯曲志』など伝統劇工具書の項目リスト、『順天時報』所載京劇上演広告などについて、データの校正と整形作業を進めるとともに、データベースのスキーマの策定に着手した。 以上、本年度の調査・研究を通じて、(1)近現代における伝統芸能の形成・変容と現状の調査・解明、(2)都市と農村を結ぶ伝統芸能のネットワーク構造の解明、(3)伝統芸能を支える社会経済背景の解明、(4)華北地域と江南地域における芸能文化および地域性の比較検討、(5)伝統芸能デジタルアーカイブの構築、という研究目的の達成に向けて、順調に研究を深化させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の上半期においては、大震災の影響と予算支給の遅れによって研究の遂行にいささか影響が出たが、夏期現地調査と文献調査、下半期における調査結果への検討および中間的な成果の発表を通じて、前年度の基盤の上に研究の深化をはかるという初期の目的を十分に達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に推移しており、大筋としては当初の計画に沿って推進していく予定である。現地調査に関しては、現地の政治・社会状況によって誰にどの程度までインタビューすることが可能であるかが異なるため、次年度上半期においてこれまでの調査結果を中間的に総合するとともに、継続的調査の必要性および可否について判断し、適宜対象地域を変更するものとする。
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