研究課題/領域番号 |
22320071
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
田中 優子 法政大学, 社会学部, 教授 (40139390)
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研究分担者 |
小林 ふみ子 法政大学, 文学部, 准教授 (00386335)
横山 泰子 法政大学, 理工学部, 教授 (60318607)
小秋元 段 法政大学, 文学部, 教授 (30281554)
大木 康 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70185213)
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キーワード | 日本 / 意識 / アイデンティティ / 17・18世紀 / 大衆文化 / 表現 / 国難 / 対外意識 |
研究概要 |
1、4月は「信仰から見た日本意識」6月は「曲亭馬琴と日本意識」というテーマで近世庶民の日本意識のありどころを探った。今年度は東日本大震災を受け、「国難」と日本意識の関係について研究すべきであることが合意された。 2、7月には、前年度に予定していた国際シンポジウム「日本意識と対外意識」を開催した。このシンポジウムは、戦略的研究基盤形成支援事業「国際日本学の方法に基づく<日本意識>の再検討」の中のアプローチ(1)「<日本意識>の変遷」のシンポジウムと重ね合わせながら開催したが、その部分と、科研費の部分とを区別しておこなった。科研費のシンポジウムとして、石上阿希(立命館大学研究員)「春画をめぐる対外意識-春画を作る、見る-」岩崎均史(たばこと塩の博物館)「近世庶民に於けるアルファベット受容の傾向~ABCD(アベセデ)の魅惑」分担者・大木康「江戸時代人の対中意識-「漢」と「唐」をめぐって-」の発表を行った。また戦略的研究基盤形成支援事業としては、ロナルド・トビ(イリノイ大学)「日本中近世の異国・異邦人」タイモン・スクリーチ(ロンドン大学SOAS)「メメント・モリと吉祥画の出会い」を設定し、新しい課題のために川村湊(法政大学)「神国日本・震災日本」を話してもらった。なお、渡辺浩(法政大学)によるコメント、分担者・小林ふみ子による司会で議論を進めた。 3、フルテキストデータベースを共有することにより国際日本学インスティテュートの大学院生が専門領域の検索を試すようになっているが、2011年度も李知蓮「日本文化における義理」川崎瑛子「薬品会から見える日本意識」という、二人の大学院生による発表がなされた。 4、2012年3月に年度末シンポジウム「<日本>を意識する時」をおこない、分担者・横山泰子「幕末の災いと日本意識」を中心に、木村純二(弘前大学)「和辻哲郎の日本意識」福田安典(日本女子大学)「平賀源内の日本意識」佐藤悟(実践女子大学)「19世紀の出版統制と外国」の発表で議論をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究会やシンポジウムを予定通りに開催でき、その成果は期待以上であった。大学院生とこの研究を共有することもできている。しかし東日本大震災を受けて、当初とは異なる課題が浮上し、今年度に力を入れる予定であった東アジアとの比較は進展しなかった。まとめの年次に入るにあたり、日本そのものが大きな転換期であることから、当初の予定とは異なっても、さまざまな国難を含めた「日本が意識されるとき」を、近世庶民文化に探ってゆくべきであろうと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上記したように、当初計画した「庶民文化の日本意識表現を、できるだけ広範囲に集め、アジアとも比較しながら研究する」という方針を変更し、「日本が意識されるとき」に絞り込んでまとめる。近世は戦争こそなかったものの、対外関係では中国文化の大量輸入、オランダ東インド会社から持ち込まれる世界各地の情報と技術、交易に使用する金銀の枯渇、ロシア、イギリス、アメリカの交易要求など、日本文化を意識する機会に満ちていた。さらに、元禄・安政をはじめとする大地震、コレラの蔓延など、国内の危機意識もあった。大震災が、今日のように「国難」意識を生み出したかどうかの比較も必要である。いかなることが国難であったか、それは庶民にとっても同様であったかなど、現在と近世との「国難」意識の違いから、「国」意識の違いを発見できる、と考えている。
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