1.【研究者の招へいと派遣】6月にサハリンから研究者2名を招へいし、道立北方民族博物館(網走市)と北海道大学において情報交換と研究打ち合わせを行った。本研究が掲げるネットワークを海外にも拡大するうえで有意義であった。 2.【現地調査】8月に研究協力者1名をサハリンに派遣し、ウイルタ語に関するデータ収集を行った。また9月に津曲はロシア沿海地方のウデヘ語話者のもとを訪れ、継続中のライフヒストリーに関するテキスト収集を行った。 3.【成果の公開】一般向けの普及活動として、7月に北海道大学でサハリン先住民の写真展を開催、また8月には札幌市地下歩行空間で北方文化の展示を行った。さらに2月に津曲は北海道大学総合博物館において、北方民族文化について講演した。学術的な報告として、10月に津曲がサハリンでの国際シンポジウムで発表した。この発表はウイルタ語で行われ、地域社会との連携にも有意義であった。呉人は9月にイタリアの国際学会でコリャーク語に関する研究発表を行うため、本科研で出張した。さらに1月に北海道大学で開催された「北方の言語と文化にかんする国際シンポジウム」において、津曲がデータの公開と電子アーカイブ化について発表するとともに、内外の研究者と連携を深めた。 4.【論文集の継続刊行】初年度に創刊した『北方言語研究』の第5号を編集・刊行し、北海道大学の機関レポジトリHUSCAPにも公開した。今号では分担者や本科研の研究協力者を含む16件もの論文・資料が寄せられた。毎年度、継続して号を重ねたことで、北方言語研究者のネットワークとしての役割を確立できたと考えている。さらに津曲は、継続して取り組んでいるウデヘ語話者によるライフヒストリー記録の続編(シリーズ8冊目)をウデヘ語・ロシア語対訳テキストの形で刊行した。いっぽう呉人は、本科研の成果を含む一般書を共著で刊行した。
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