研究課題/領域番号 |
22320090
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
那須川 訓也 東北学院大学, 文学部, 教授 (80254811)
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研究分担者 |
バックレイ フィリップ 東北学院大学, 文学部, 教授 (20335988)
遊佐 典昭 宮城女子大学, 学芸学部, 教授 (40182670)
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キーワード | 極小論 / 音韻部門 / 裸句構造 / 再帰性 / 依存関係 / 音節構造 / エレメント理論 / 言語獲得 |
研究概要 |
本研究課題は、極小論(Chomsky 1995,2001,2005)を、その射程外であるように扱われてきた音韻部門に適用することを試みるものである。「極小化」という概念のもと、統語・意味部門と音韻部門に共通する高次な普遍的範疇や原理を探求し、それらから成る音韻モデルを考案するために、2年目に当たる平成23年度は、Jakobson、Fant & Halle(1952)が還元主義的方法で確立した弁別素性を発端とする様々な分節内構成単位を比較、検討し、極小論の指針と合致する構成要素を探求することを研究の中心とした。同時に、共時・通時的音韻現象や音韻獲得の仕組みのみならず、音韻部門の起源および進化にかかわるメカニズムを部分的に解明することができた。 研究遂行に当たり、まず、極小論の考え方と合致する最小単位を探求するため、弁別素性理論、素性階層理論、依存音韻論、粒子理論、エレメント理論等の音韻的最小単位に関連する文献を収集し、それらの内容の比較検討を行った。その上で、独立解釈可能で余剰性を排する最小単位の特定化を行い、それらを用いて、過剰な表現能力を与えない分節内表示モデルの検討を行った。以上の研究を通して考案したモデルを用いることで、有標性理論を介することなく、分節内構造から直接有標性を導き出すことが可能となった。また、音韻論における構造構築上の基本単位を「分節」や「音節」ではなく、エレメント(音韻最小単位)であるとし、音韻部門における「再帰性」の存在を証明した。 上述の研究成果は、本研究のウェブサイトを通して公開し、海外の研究協力者および国内外の関連分野の研究者と情報の交換を行ってきた。また、本年度の段階で考案した極小主義的分節内表示の妥当性を検討するための言語分析およびその研究成果は、国内外において権威のある雑誌等から論文(15編)としてまとめられ出版された。また、国内外で開催された26の国際学会やワークショップにおいて報告された
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究遂行に必要な関連文献やデータの入手が予定通り行われ、それらを丹念に検討・分析した結果をもとに(部分的にではあるが)分節内構造のモデルを考案できた。また、研究成果を国内外の学会や学会誌で発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的遂行のために、まず、(1)専用のウェブサイトを用意して活動状況を公開し、外部からのフィードバックを常に受け入れられる体制を引き続き整える。次に、(2)統語部門で用いられている範疇や装置を多く採用している依存・認可・統率音韻論を中心に、音韻表示の適格性に関する文献の収集を行い、それらの内容を丹念に検討する。そして、(3)同様の関心を持つ国内外の研究者から情報を収集し、積極的に意見の交換を行う機会を引き続き設ける。さらに、(4)研究成果を英語でまとめて、国内外の学会や学会誌で発表する。
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