研究課題/領域番号 |
22320092
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
助川 泰彦 東北大学, 国際交流センター, 教授 (70241560)
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研究分担者 |
吹原 豊 福岡女子大学, 文理学部, 講師 (60434403)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インドネシア人 / 定住外国人 / 継承言語 / バイリンガリズム / ミナハサ / マナド / フロッグストーリー |
研究概要 |
平成25年度においては大洗町在住のインドネシア人就労者家族の小中学生子女の全数調査を目指して、現地訪問を繰り返した。震災から復興した同町においては水産加工業の人手不足から新規参入の日系インドネシア人就労者が相次ぎ、それに伴って家族に随伴して移住する児童生徒も十名以上あり、それらの情報収集にも最大の努力を払った。 平成25年度においては『Frog, where are you』(通称「Frog story」)という文字の全くない絵本を利用して、Minami(2011)に習い同じストーリーを日本語とインドネシア語の二言語で語ってもらうという手法によって当該児童生徒のバイリンガリズムの実態を明らかにしようと努めた。詳細なデータ分析は現在作業中であるが、およそ2割程度の児童において均衡状態に近いバイリンガリズムが見られ、2割程度において不均衡ではあるがある程度の継承言語の保持が見られ、残りの約6割においては日本語だけを理解するモノリンガル状態が観察された。 一方で、同町のインドネシア人コミュニティーにおいてインドネシア語教育およびインドネシア人としてのアイデンティティーを継承させようという動向が平成25年末の頃から始まり、その後月に1回程度ではあるが「インドネシア学校」と呼ぶべき教育活動実践の場が開かれるようになった。この活動が同町のインドネシア人児童生徒にどのような影響を及ぼすかについても本研究者は注目して参与観察を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の調査開始は震災から2年が経過しており、震災の影響はほとんどなくなりほぼ計画通りに調査を行うことができた。新規参入者も相次いでいるがこれまでに構築した同コミュニティとのラポールによってそうした新参インドネシア人とも円滑にネットワークを形成することが可能となっており、今後とも順調に調査を進展させることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
同町の移住者第二世代と言える児童生徒達は平成25年度から大きな転換点を経たと考えられる。それは、義務教育を終えて高校進学を迎える世代が急増したことによる。特に平成25年4月にある家族の子女が茨城県内の上位の高校に入学を果たし、職能コースを選択したことから、数年後に日本社会において中流以上の生活者として社会人となることが見込まれており、同町のインドネシア人コミュニティにとって大きな話題となった。このことがきっかけとなり、保護者たちの間にも教育が子女の将来の社会上昇を保証することに対する意識が芽生え、教育に対する態度に大きな変化が見られた。 本研究ではこうした変化に対応して聞き取り調査と参与観察を続け、日本にとっての外国人就労者コミュニティの存在、および外国人就労者コミュニティにとっての日本社会のあり方を、言語習得と文化適応の両面から考察して行く必要があると考えている。
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