研究課題/領域番号 |
22320095
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村岡 貴子 大阪大学, 国際教育交流センター, 教授 (30243744)
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研究分担者 |
因 京子 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (60217239)
中島 美樹子 東北大学, 工学(系)研究科, 教授 (80005488)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 専門日本語 / アカデミック・ライティング / 論文スキーマ / 学習リソース / 文章作成支援 / 文章評価能力 / テキスト分析タスク / メタ認知 |
研究概要 |
1.文章作成支援リソースの開発 昨年度に続き、文章作成支援リソースの開発を進め、支援可能な学習者の日本語レベルや母語(漢字圏・非漢字圏)および、在学段階(研究生、修士、および博士)等の背景を十分に考慮し、また、授業実践やインタビューおよびアンケートでの調査により、ライティング能力獲得過程を記述した。それらで得た知見をもとに、当該リソースの内容と構成を検討した。最終的に、本冊の教科書と、解答例や解説を含めた別冊の解説書を完成した。当該リソースの本冊は、全10章から構成されるものである。具体的には、タスク中心であり、学習・研究活動への意識化、文章分析、文章リバイズ、および文章執筆等に分かれている。文章の分析やリバイズには、問題を含む多数の文章や、それと比較対照する改訂版文章を併置し、具体的分析と意識化の促進に資するように配慮した。文章ジャンルは、論文や研究報告以外にも、調査のためのEメールでの依頼文や発表要旨等、研究活動を支える周辺的文章も豊富に盛り込み、文章の目的と読み手、文章表現と構成をより具体的に意識可能なように配慮した。 2.リソースを試用した授業実践と学習者観察の継続 上記の通り、完成した教科書を試用し、授業実践を行いつつ、学習者の学習過程やライティング能力向上の過程を観察してきた。また、学習者へのアンケートやインタビュー調査からは、彼らの学習への意識や、論文スキーマ(研究成果を公表する文章のあり方についての知識の総体)の形成過程を質的に分析している。成功者と言える学習者の一部からは、従来このようなリソースの利用や授業受講の経験がなく、かつ、上記のタスク活動においては、言語の差異を越えて、論理的な思考を母語で考えているかのような経験をしたとのデータが得られた。また、母国での母語や日本語の言語学習経験におけるライティング学習の方法も、各自のこれまでのライティングに対するビリーフに少なからず影響を及ぼしていることが考えられ、今後のリソース活用方法への示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基礎研究としてのライティングの学習過程やライティングへの意識の差異、およびそれに影響する種々の背景等が明らかとなり、それらの知見をもとに、文章作成支援のためのリソースを開発した。今後は、当該リソースを用いた教育実践を広く行い、学習者や教員への調査をより進めたい。可能な限り、海外の大学においても関連の調査を実施・継続していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
特に大きな問題はないが、今後の研究の進捗状況に鑑みて、学習者の在学段階や専門分野の差異による教育方法や学習支援方法が異なることが予測される。そこで、開発したリソースを用いた教育実践を継続し、かつ学習者への調査研究を引き続き行いたい。必要に応じて、国内外の多様な分野の研究者との連携についても検討を行いたい。
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