研究課題/領域番号 |
22320111
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
松本 佳穂子 東海大学, 外国語教育センター, 教授 (30349427)
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研究分担者 |
小山 由紀江 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20293251)
大野 秀樹 大東文化大学, 経済学部, 准教授 (40343628)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | クリティカル・シンキング / 異文化対処能力 / Can-doリスト / 外国語教育 / 到達目標 / 評価基準 / 授業モデルの最適化 / 自己振り返りツール(AIE) |
研究概要 |
本研究の最初の2年間は、北米・欧州のクリティカル・シンキング及び異文化対処能力の指標や評価基準を参考に、グローバル人材の育成を目指す日本の大学の外国語教育が目標とすべき項目をCan-doリストとして細目化した。更にそれを質的、量的両方の分析方法を使って精査・検証しつつ、普遍的な指標と周辺的な指標とに分け、授業タイプ別に4種類のCan-doリストに収斂した。 本年度(3年目)は、これらのCan-doリストが到達目標及び評価基準として実践の場で十分な妥当性を持ち、かつ指導効果につながることを検証するため、様々な教材と評価ツールを開発して実際の授業でパイロット実験を行った。対象とした授業は主に英語教育の6つのタイプであり(必修の基礎科目、受信能力科目、発信能力科目、スキル統合科目、ESP/EAP科目、言語学系科目)、授業のタイプから生じる要素に、教員や学生の特性(教員のバックグラウンド、学生の専攻やレベルなど)を組み合わせ、6種類のCan-doリストを基にした授業モデルとしての最適化を図った。他の言語(外国語としての日本語、ドイツ語、フランス語)については、英語で構築したモデルを基に教材と評価ツール開発を進めている。 Can-doリストと授業モデルの検証に当たっては、教員や学生に対するアンケートやインタビューの結果に加えて、ヨーロッパ評議会言語政策部の開発した異文化対処能力に関する「自己振り返りツール」であるAutobiographies of Intercultural Encounters (AIE)に書き込まれた学生の反応の分析が非常に有益であった。 実際の授業での使用と教員や学生の反応の分析から、それぞれの授業が目指す言語スキルとクリティカル・シンキング及び異文化対処能力の指標の組み合わせについて様々な知見が得られ、Can-doリストの項目の精緻化を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は英語以外の他言語(外国語としての日本語、ドイツ語、フランス語)で並行して実験を行う予定であったが、英語からの翻訳教材がそれぞれの言語の文化的背景に合わないため、ヨーロッパ各国のFREPA(複文化・複言語アプローチ)プロジェクトの事例からサンプルを入手してそれを基に教材開発を進めている。ただ、英語を中心に、一部日本語の授業を含む実験によって6つのCan-doリストと授業モデルが構築できたので、他言語についてはそのモデルに調整・修正を加えながら進めることが可能になった。よって今年度予定通りに遂行できなかった他言語についての実験は、来年度に短期間で効率的に完了できると思う。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度であるため、本研究で構築してきたCan-doリストと授業モデルについて、研究発表に加えてシンポジウム、ワークショップ、教員研修などを行って広くフィードバックを収集し、より実践的で実行可能なものになるよう改良をして行く。 「自己振り返りツール」であるAutobiographies of Intercultural Encounters (AIE)の使用自体がクリティカル・シンキングと異文化対処能力を高める効果があることが確認されたので、その授業への導入方法も考えたい。 評価ツールについては、さまざまな形式のものが考えられ、本研究だけで多くの検証はできないが、ETSのクリティカル・シンキングテストのような多肢選択型のテストとエニス・ウェアテストのようなエッセイ型テストの相関研究を中心に、できるだけ多面的な分析を行う予定である。
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