研究課題
テスト理論・統計手法と第二言語習得研究の有機的な連携により日本人英語学習者の英語文法能力発達過程を明らかにする研究の新たな展開として、ニューラルテスト理論(現在では「潜在ランク理論」と呼ばれているため、以下LRTと表記する)を援用し、客観的なデータに基づいて能力記述文体系を構築することを本研究の主目的とした。LRTは能力を段階評価するために連続尺度ではなく順序尺度を仮定してデータを分析するテスト理論である。1990年度・1997年度・2004年度大学入試センター試験本試験「英語」の初回受検者からそれぞれ40,000件をランダムに抽出し、そのデータをLRTを用いて分析した。その上で、各潜在ランクに所属する学習者が十分に高い確率で正答できる項目が求める能力・知識を記述することにより、各年度受検者の能力記述文体系を構築した。さらに、共通被験者計画による尺度等化を行い、能力記述文に現れる英語学力の経年的な変化を調査した。その結果、8つの潜在ランクを仮定した場合、1990年度実受験者は下位ランクにおける分布が少なくより上位ランクでの分布が相対的に多いが、1997年度・2004年度実受験者の場合は上位ランクへの分布が少なく、平均潜在ランクも年度を追う毎に下降する傾向も確認された。さらに1990年度の上位ランクに所属する学習者を特徴付ける能力は主に文法・語彙に関わる知識であるのに対し、2004年度受検者の上位層は論理的な文章展開に必要となる能力で特徴付けられることが判明した。得られた結果に基づき、学習指導要領改訂の影響といった観点からの検討を行うとともに、個々の学習者のランクメンバーシッププロファイルに基づいたフィードバックのあり方について議論し、本研究自体を一つの事例として、データに基づく能力記述文体系構築と更新のプロセス・方法の提案を行った。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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広島大学英語教育学会『英語教育学研究』
巻: 3 ページ: 21-31.
In W.M. Chan, K.N. Chin, S. Bhatt, & I. Walker. (Eds.), Perspectives on individual characteristics and foreign language education. Boston, MA: De Gruyter Mouton.
巻: - ページ: 131-150.