研究課題
今年度は以下のような日程で、二度の研究会を開催した。第一回(2012年、6月30-7月1日:北海道大学文学研究科)では、まずゲスト・スピーカーの北海道大学専門研究員の加部勇一郎氏が「清代文人の記した異国について」報告し、続いて武田雅哉が「万里の長城と日本人」、宇沢美子が「American Orientalism」、東田雅博が「文化史のリオリエント」についてそれぞれ報告した。加部は、世界の中心という意識の強い清朝の人々がいかなるエキゾティシズムを喚起しうるのかという問題提議を行い、武田は16世紀以降の万里の長城をめぐる言説に、エキゾティシズムを喚起する人間の想像力の豊かさを見た。宇沢はフォークナーの、あまり論究されることのないオリエンタリズムをとりあげ、そのモダニズムへの影響を探った。東田は、近年注目されている18世紀の世界における中国のエキゾティックな文化的影響力についての議論の妥当性を論じた。第二回(2012年、12月1日、2日:富山大学人文学部)では、橋本順光が「19世紀英国におけるアラビアンナイト物語の変奏」、斎藤大紀が「虚構の都市、虚構の女」、竹中亨が「文化移転概念をめぐって」、立川健治が「明治期の渡米熱-アメリカの原風景」、杉本淑彦が「19世紀フランスのエジプト趣味」と題してそれぞれ報告した。橋本は西洋世界にエキゾティシズムをかきたてた「アラビアンナイト」を取り上げ、そこに東洋を触媒とする西洋側での変化をディケンズなどの作品に見いだした。齋藤は北条誠らの作品に見られる喪失したエキゾティシズムという問題を提議した。竹中は文化移転に際しての文化の送信側と受容側に生じる問題を、立川は苦学生の天国、機会に満ちた国などのアメリカイメージが渡米を奨励してしまうメカニズムを、杉本は中近東を対象とするエキゾティシズムの起源を論じた。その後、本研究会最後の総括を行った。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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『金沢大学 歴史言語文化学系論集 史学・考古学編』
巻: 第5号 ページ: 163-182
『連環画研究』
巻: 第2号 ページ: 75-87
『フォークナー』(日本ウィリアム・フォークナー協会)
巻: No.14 ページ: 37-53