研究実績の概要 |
東アジアの歴史には規範的要素が強く、西洋の歴史には認識的要素が強いが、本来的に歴史は、洋の東西を問わず、認識的な要素と規範的な要素を内包している。このふたつの要素を分析的に検討することで、歴史の持つ文化的・歴史的・社会的役割を解明するのが本研究の目的である。 具体的には以下の諸問題の解明を行った。[1]歴史という概念そのものに内包されている認識的要素と規範的要素の解明。[2]歴史叙述における認識的要素と規範的要素の比較考察。[3]歴史的空間概念の表象形態における認識的要素と規範的要素の解明。[4]歴史的時間概念における認識的要素と規範的要素の解明。 最終年度である平成26年度は、諸般の事情により研究を延長し、平成27年11月末に完了した。本年度は主として、研究の総括を行った。 研究実績として、学術論文5件と国際学会発表6件の成果を得た。中でも、International Encyclopedia of Social and Behavioral Sciences,(Elsevier, 2015) に掲載された研究代表者の2件の大項目論文“History and Historiography: East Asia”と“Time, Chronology and Periodization in History”は、本研究の根幹をなす成果である。 本国際百科事典は、当該研究分野における世界の最高権威たちが、執筆依頼を受けて著述したものである。つまり、本研究が、ディシプリンとしての歴史学の存在基盤に関する世界最先端の研究として、国際的に認知された証拠である。加えて本研究は、日本人にしか出来ない独創的なアプローチであることを、世界の歴史家が認めた結果でもある。歴史分野の大項目執筆者243人の内、日本人執筆者は研究代表者を含めて5人である。
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