研究課題/領域番号 |
22320130
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
根岸 茂夫 國學院大學, 文学部, 教授 (30208285)
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研究分担者 |
鈴木 淳 国文学研究資料館, 文学資源研究系, 教授 (40162953)
白石 愛 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (60431839)
古相 正美 中村学園大学, 人間発達学部, 教授 (30268966)
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キーワード | 国学 / 荷田春満 / 歴史学 / 文学 / 神道学 |
研究概要 |
本年度は、京都市伏見区の東丸神社にて春夏2回の調査を実施し、春満生家である東羽倉家文書の確認しながら、新たに春満の自筆史料を発見した。また高知県の土佐山内宝物資料館(山内文庫)でも夏1回の調査を実施し、春満の学統を受け継ぐ谷垣守の法制関係史料を確認した。 定例研究会における成果として、第一に春満の弟である荷田信名の日記の解読と検討を進め、春満の死去前後における門人らの詳細な動向や、春満を中心とした未解明の交友関係、学問の伝播を明確にした。第二に、東羽倉家の年中行事『秘記』(前田健蔵著)を精読し、伏見稲荷の社家である羽倉家の幕末期における役割を詳細に解明できた。本資料からは東羽倉家が畿内において大きな影響力を保ったことや、稲荷講が幅広く浸透していた様子が窺え、上方文人の結節点としての東羽倉家の役割や、信名の養子である荷田信郷(春満歌集『春葉集』を出版)、さらには春満の弟信名へとたどり得る点でも重要な解読作業となった。なお『信名日記』および『秘記』は、今後、成果報告として出版の準備も整えた。 研究代表者・研究分担者・研究協力者および科研費研究員による各人の研究では、文芸関係史料の調査・検討によって、荷田信満(信郷実父)の書簡和歌詠草および、春満の実子直子の消息を中心に解読を進めた。書翰類の調査・検討からは、当時の女性の生活や、春満が江戸で和歌指導をした意味、現在は無くなってしまった春満の蔵書類について実情を知ることができた。伏見稲荷の社家関係史料の調査・検討では、稲荷社の「本願所」であった愛染寺関係史料の検討を行い、神仏習合に関する新たな知見と春満の学問形成に対する影響について分析を始めた。 調査においては、史料を一般公開することを念頭に、諸史料を形態に応じてデジタル撮影し整理を行い、その成果はホームページを作成して、公開を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
春満の死去前後の門人たちの動向が、日記の検討により明瞭になってきた。これまで人名だけしか判明していなかった門人の交流が具体的に検証され、国学の以後の発展にどのように影響するかについて展望が開けてきた。上記の概要でも書いたとおり、多様な分野で検討が進んだ。ホームページによる史料の公開を開始し、学界への寄与を図った。研究協力者である一戸渉と渡邉卓が研究会による調査の成果を利用して研究書を刊行した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度と同様、今後、2度にわたる出張調査を重ねて東羽倉家の文書を丁寧に確認しつつ、荷田春満の学問形成やその体系を近世社会の展開のなかに位置づけるとともに、春満の門人の動向と、交流関係をさらに詳細に解明し、総合的な視野からの研究を推進する。また、定例研究会を継続し、12月には研究集会を開催することを予定し、成果はホームページに反映させる。かつ、ホームページも史料と研究の公開を図り、さらに充実させていきたい。
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