研究課題/領域番号 |
22320134
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
海老澤 衷 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (60194015)
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研究分担者 |
高橋 敏子 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (80151520)
井上 聡 東京大学, 史料編纂所, 助教 (20302656)
清水 克行 明治大学, 商学部, 准教授 (40440135)
清水 亮 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (90451731)
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キーワード | 備中国新見荘 / 東寺百合文書 / 復原調査 / 地名 / 高林寺 / 寺院・神社・石造文化財 / 灌漑 / 多層荘園記録システム |
研究概要 |
2011年6月4日に第2回ワークショップを開催した。内容は、(報告1)海老澤衷「多層荘園記録システムと新見荘」、(報告2)宮崎肇「新見荘田所職文書案をめぐって-その成立の時期と経緯-」、(報告3)似鳥雄一「鎌倉・南北朝期の新見荘関連帳簿とその荘園経営」、(報告4)大澤泉「寺院・神社・石造文化財の調査・その1」で、現段階における研究成果を明らかにすることができた。 代表者・研究分担者の合同調査にあたっては、研究計画で示した各ブロックを(1)I・II地区(高瀬村・釜村)、(2)III・V地区(千屋村・坂本村)、(3)IV・VI地区(足立村・上市村)、(4)VII地区(西方村)に統合して地域分担を行った。この4地区体制が今後の調査活動の基盤となるものである。地域の人々の協力により、中世の交通路の調査では荘域の広い範囲で確認することができ、灌概水路調査では特に釜村において鉄穴流しの砂鉄採取のためにできた水路の復元が可能であることがわかり、鎌倉時代の文書に示されている鉄年貢との関係が浮かびあがってきた。研究計画時では予想をしていなかった新たな視点が登場したといえる。新見市では、たたら製鉄の工房を復元しており、2012年2月10日に、市教育委員会の白石祐司氏に報告「備中国新見荘におけるたたら製鉄」をしていただいた。従来行っていた基礎的な研究の上にこの地の特性を踏まえた新たな展開を見るに至った。 また、「寺院・神社・石造文化財の調査」では中世後期から近世初頭にかけてこの地域で大きな力を発揮した曹洞宗寺院にポイントを置いて調査を行った。高林寺については既に前年度からの継続調査となっているが、さらに西方村の大医寺など、現在の村落の中心的な景観を構成する寺院を調査することによって荘園内部に育つムラの性格の一端が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
備中国新見荘は広大な荘園であり、当初は全体の掌握に時間がかかるものと予想された。地域を七つのブロックに分けて、計画を立てたのもそのためであるが、地域の人々の協力により、初年度から全域で調査活動を進めることができ、二年目にして未着手地域はゼロとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
重要な調査資料である明治期の土地台帳は隣接する高梁市に所在する法務局高梁出張所に保管されており、三脚に設置したデジタルカメラでの撮影が許可された。しかし、撮影対象は厖大に存在し、東日本大震災により作業着手が遅れ、平成23年度内に終了させることができなかった。今後撮影資料を読み取り、エクセルに打ち込んで、データ化することに労力を費やさねばならず、24年度の前半で撮影作業を終了させることができるよう、法務局の開室日である月~金のウィークデイに収まる撮影作業日程を調整する。夏休み以降には、新見市税務課に保管されている「切り絵図」と土地台帳データとの照合作業を進め、総合的復元調査の基礎作業を終了させたい。
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