研究課題/領域番号 |
22320137
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山田 重郎 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30323223)
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研究分担者 |
柴田 大輔 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40553293)
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キーワード | アッシリア学 / 楔形文字 / 文献学 / 歴史学 |
研究概要 |
シリア北東部ハブル川中流域に位置するテル・タバン遺跡において2005年以来行われてきた国士舘大学の発掘調査により出土した480点以上の襖形文字文書の文献学的・歴史学的研究が本研究の目的である。本研究は、これら文書を同遺跡から新たに出土する楔形文字史料とともに系統的に研究し、古代のタバトゥム/タベトゥ市(現テル・タバン遺跡)とその周辺の歴史と文化を明らかにすることを目的としてきた。 当初の予定では2011年8月~10月に行われるテル・タバンにおける発掘調査に山田と柴田が参加して、新たに出土する襖形文字資料を記録するとともにダマスカス博物館に所蔵される前年度までに出土した文字資料の保存強化、解読、研究に取り組む予定であったが、シリア国内における治安の悪化のためにこの計画は中止となった。そこで、すでに記録整理した写真、ハンドコピ―等の資料をもとにテル・タバン出土資料の解読と研究を進めることに力を注ぐことにし、山田と柴田が、ドイツ、ハイデルベルクに長期滞在し、ハイデルベルク大学のアッシリア学専門図書館を用いて集中的な文献学的研究を行った。 研究の進展と並行して、これまでの文書研究の成果の一部を山田と柴田が国内外の学会・研究会(国際アッシリア学会[ローマ])、ハイデルベルク大学、ミュンヘン大学、筑波大学)において発表すると同時に、古バビロニア時代から中期アッシリア時代のタバトゥム/タベトゥの地政学的状況、王統、暦(特に月名)、祭儀、度量衡、書記伝統等についてテル・タバン文書がもたらす新たな知見に基づき山田と柴田が複数の論文にまとめた。これらの論文の重要な論点は以下の通り。:(1)テル・タバンとその周辺地域は前18世紀後半から前15世紀頃まで、ほぼ一貫してユーフラテス中流域の政治的中心(テルカ市近郊)の政治的影響を強く受け、宗教文化的伝統(暦におけるマリの伝統)ならびに書記伝統(いわゆるハナ文書の伝統)においても、多くの点でユーフラテス中流域の政治的中心と連なっていた。(2)こうした伝統文化を維持したタバトゥム/タベトゥ地域には、前15・14世紀以降「マリの地の王たち」の王朝が創設されるが、この王朝は当初考えられていたようにアッシリア起源ではなく、ローカルな王朝であることが、王朝初期の王名(フリ語)から明らかである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリアにおける治安悪化により、現地における楔形文字資料のクリーニング、保存強化、校訂が不可能になったことにより研究計画は変更を迫られた。しかし、シリアでの現地調査にかえて海外の専門図書館における集中的な文献学的研究により、研究そのものは停滞なく順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
シリアにおいて治安回復が見られず、今後も現地での調査・研究が難しい場合は、引き続き欧米の専門図書館を利用した集中的な文献学的な研究に労力を集中していきたい。これにより、研究可能な文書を優先的に解読、出版し、それら文書の分析に基づく研究を促進する方針である。また、シリアでの活動が制限されたことで、さらなる校訂作業に基づき文書のハンドコピーを作成することが難しくなったが、文書を写真、転写、翻訳によって出版する形態に転換することで、滞りなく出版計画を進めていけると考えている。
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