研究課題/領域番号 |
22320137
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山田 重郎 筑波大学, 人文社会系, 教授 (30323223)
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研究分担者 |
柴田 大輔 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40553293)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アッシリア学 / 楔形文字 / 文献学 / 歴史学 |
研究概要 |
シリア北東部ハブル川中流域に位置するテル・タバン遺跡において2005年以来行われてきた国士舘大学の発掘調査により出土した480点以上の楔形文字文書の文献学的・歴史学的研究が本研究の目的である。 2011年以来のシリア国内の治安悪化にともない、シリア国内の発掘キャンプや博物館における文字史料の保存、解読、研究の計画は、実施不可能な状態が続いているが、すでに記録整理した写真、ハンドコピー等の資料をもとにテル・タバン出土資料の解読と研究を進めた。研究の進展と並行して、これまでの文書研究の成果の一部を山田と柴田が国内外の学会・研究会において発表した。山田の発表内容は、特に古バビロニア時代の学校文書にみる当該期のテル・タバンにおける書記教育の諸相について、柴田の発表内容は、中期アッシリア時代のタベトゥ市の国家行政と宗主国アッシリアとの関係等を論じるものである。また、沼本(連携研究者)・柴田・山田の共著論文として、前2千年紀を通じたテル・タバンの物質文化の変遷と文字史料から得られるデータを対比して検討した論文を公刊した。この論文は、テル・タバンでは、前2千年紀を通じ、大きな断絶なしに居住が続き、ローカルな文化的・社会的伝統が継続していたことを明らかにしている。さらに、古バビロニア期のテル・タバン出土文書と内容的に深くかかわるテルカ(テル・アシャラ)出土文書の一部が、O. Rouaultによって出版されたが、山田は、このRouaultの出版の書評論文を準備した(ドイツの学術誌Zeitschrift Assyriologieに近刊)。 また、テル・タバン周辺の考古学的調査の最新の動向を把握するため、イラク・クルド自治区ならびにイギリスから3名の研究者を招聘し、10月24日に筑波大学東京キャンパスにて近年のクルディスタン地域での調査についての講演会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シリアにおける治安悪化により、現地における楔形文字資料のクリーニング、保存強化、校訂が不可能ではあるが、すでに準備した写真史料とハンドコピーをもとに、海外の専門図書館も利用し、文献学的研究は停滞なく進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
シリアにおいて治安回復が見られず、今後も現地での調査・研究が難しい可能性が極めて高いため、今後は、引き続き欧米の専門図書館を利用した集中的な文献学的な研究に労力を集中していきたい。これにより、研究可能な文書を優先的に解読、出版し、それら文書の分析に基づく研究を促進する方針である。また、シリアでの活動が制限されたことで、さらなる校訂作業に基づき文書のハンドコピーを作成することが難しくなったが、文書を写真、転写、翻訳によって出版する形態に転換することで、滞りなく出版計画を進めていけると考えている。
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