研究概要 |
本研究は,現在日本国内に分散所蔵されているドイツ租借期青島(以下「独租期青島」と簡称)旧蔵書籍という歴史的資料群の全貌把握とその存在の歴史的背景に対する調査・解明という構想の下に行なうものである.具体的には,独租期青島旧蔵書籍各冊上に貼押・記入された諸種の「書誌情報」(蔵書・整理票,蔵書印,署名,書籍整理時の書込等々)の緊急採録・分析と,その作業を通じて初めて視えて来る当該書籍の青島への将来事情,青島での整理・利用状況,日本の青島守備軍による接収・整理・処分状況,及びドイツの東亜に於る租借地経営(特にその文化・教育面)の実態並にその特徴に就て,具体的に研究・解明することを目的としている. 本研究の2年目にあたる本年度も,前年度に引き続き,独租期青島旧蔵書籍に対する書誌学的精査を進めた.具体的には,日本に現蔵される当該書籍に対する現蔵確認と,その各冊毎の特に伝世・管理・利用に関する「書誌情報」(書名・刊記等々の一般的書誌情報の採録を含む)の緊急採録・分析を,主に京都大学附属図書館において行なった. また,その調査と並行して,東京帝国大学附属図書館が受け入れた当該書籍とその受入の経緯などに関する調査も進めた。当該図書館が当該書籍を受け入れた際に作成した受入原簿に記載される各書冊を,青島守備軍が日本の各高等学術機関などに当該書籍を寄贈した際に添付した目録類に記載される各書冊と比較しつつ,その同定作業を試みた.なお,その調査結果の一端は東京帝國大學附属圖書館受入<濁逸租借期青島所藏書籍>略報'として公表した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに進めてきた東京大学・一橋大学・北海道大学・京都大学などでの猫逸租借期青島所藏書籍の緊急採録とともに,九州大学・新潟大学など,他の高等学術機関が所蔵する当該書籍の緊急採録も行なっていくつもりである.また,そうした緊急採録に併せ,ドイツの東亜に於る租借地経営(特にその文化・教育面)及び日本の青島守備軍による占領地統治実態についても,その解明を試みるつもりである.
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