平成22年度の主な研究成果としては、後掲の研究発表とは別に次の二点をあげることができる。 一つは、中国とモンゴルを結ぶ交易路、具体的には、「旅蒙商」と呼称された山西商人の対モンゴル交易活動ルートに関する現地調査による成果である。研究代表者と連携研究者(華立、柳澤明、楠木賢道、杉山)は、<北京-太原-大同-フリングル-フフホト-張家口-北京>のルートを実地に踏査し、太原市博物館(文廟)、山西省博物館、平遥、大同博物館、大同旧街、雲崗石窟、威遠量、殺虎口、内蒙古博物館、大召、席力図召、大鏡門、宣化城、鶏鳴駅村、等々の関連史跡の調査と現地専門家からの現地実態および研究状況に関する聴き取り調査をおこなった。これらの調査を通じて、清代「旅蒙商」の経済的実力、茶等の具体的交易商品、彼らの交易を支えた広義のインフラ状況に関する種々の資料を得ることが出来、本研究を進展させていく上で不可欠なる基本的な知見を獲得することができた。また、本研究課題の特徴を導き出す比較軸としての広西地域を中心とした各種ネットワークに関する現地調査も連帯研究者(細谷良夫)により行われ、研究分担者を中心に収集された写真等データの、公開を念頭に置いたデジタル化も進める事ができた。 もう一つは、海外に所蔵される関連資料の収集である。研究代表者は、フランス国立図書館等で所蔵されている主に満洲語の清代文献の調査を行い、「旅蒙商」の清朝統治における歴史的位置付けを考察する上で重要となる史料の収集も行うことができた。
|