本年度(平成24年度)は、主に、18-19世紀清朝下で展開した主要な交易ルート中の、満洲と四川省地域におけるルートの現地調査を実施した。 満洲におけるルートに関しては、モンゴル人と漢人の交易ルートを中心に、「満洲里→新巴尓虎左旗(ホロン湖畔、新巴尓虎右旗)→ホロンバイル(ノモンハン、ジャライノール、大興安嶺)→チチハル」のルートで踏査を行い、清代における行政、貿易、遊牧、等に関わる多数の史跡(フルンブイル副都統衙門遺址、甘珠爾廟、碑文、等々)や各地の博物館を調査し、旅蒙商の活動実態、ホロン湖岸の新バルガ牧民の遊牧状況、同地域の交易ルート実態解明に資する多くの知見を得ることが出来た。加えて、19世紀末以降、同地に進出してきたロシアや日本の史跡(東清鉄道、満鉄関係施設)の実査も行え、清代における交易ルートの19世紀末以降における変容要因に関しても知見を得ることができた。 四川省地域においては、「成都→漢源→磨西→瀘定(康定、塔公寺、居里寺、新渡橋)→二郎山→雅安(上里古、金鳳寺)」のルートで踏査を行い、清代の史跡〔茶葉古道、磨西天主堂、金花寺、瀘定橋、塔公寺(西蔵仏教寺院)、安覺寺(西蔵仏教寺院)、清真寺、居里寺(西蔵仏教寺院)〕や各地の博物館、更には自然景観や清代の都市遺構(磨西古街、上里古鎮)の調査を行い、同地での交易実態はもちろんのこと、交易の展開を支えた宗教的空間を含む現地の社会実態解明に資する多くの知見を得ることができた。
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