研究課題/領域番号 |
22320144
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
気賀沢 保規 明治大学, 文学部, 教授 (10100918)
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研究分担者 |
肥田 路美 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (00318718)
手島 一真 立正大学, 仏教学部, 准教授 (20329006)
松浦 典弘 大谷大学, 文学部, 准教授 (80319813)
高瀬 奈津子 札幌大学, 文化学部, 准教授 (00382458)
江川 式部 明治大学, 商学部, 兼任講師 (70468825)
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キーワード | 魏晋南北朝隋唐時代 / 中国仏教社会 / 房山石経 / 洛陽学 / 山西仏教 / 四川仏教 / 北斉仏教石刻 / 墓誌銘 |
研究概要 |
本研究は中国・魏晋南北朝隋唐時代の本質が「仏教社会」であるとの認識に立って、その社会の基層構造を、当該時代の仏教系文物や遺跡の調査、編纂資料の整理・考察と通じて明らかにすることを目指す。具体的には以下の4つの柱を設定し現地調査や資料整理を進め、資料のデータ化と研究蓄積を図った。 (1)房山石経研究:中国仏教協会編『房山石経(隋唐刻経)』全6冊所載の石経と題記情報の集約をほぼ完了させ、「石経山九洞所蔵隋唐石経目録」および『房山雲居寺石経大型題記資料集稿I-「諸経題記」拓本・録文篇-』を公表した。また「大般若経」600巻の石経(約1500石)の刻経状況について、「房山隋唐石経与《大般若波羅蜜多経》」として中国のシンポジウムで報告した。房山研究ではいま国内外の先頭を進んでいる。 (2)山西仏教石刻研究:近年山西仏教石刻への関心が高まっているが、本研究では可能な限り資料を網羅した「仏教石刻目録」の作成、仏教社会に関わって長治地区の調査、河北-山西間の交通路と仏教の問題を並行して進めている。まだ直接の成果が出ていないが最終年度で具体的な形に集約する。 (3)四川仏教石経研究:本年度から8世紀の灌県霊岩山仏教石経の調査に入った。ただしこれは早くに土中に埋入され、その経緯が今回の調査で明らかとなった。四川省社会科学院・胡文和氏が所蔵する石経拓本8点を実地調査し、『大正藏』との照合や検討の上、結果を公表した(『東アジア石刻研究』。 (4)華北仏教石刻:前年につづいて洛陽出土の墓誌・碑刻資料の調査と考察に力を入れ、洛陽石刻情報の紹介を進めた(『東アジア石刻研究』)。また個別に山西東南部や河北・河南の仏教石刻を現地調査し、知見を深めた。これらは研究会で報告し、時代性にどう位置づける論議をしている。 全体に主担当者の動きに濃淡があり、当初計画から遅れている部門ではさらに力を入れ、最終年度では多くの成果を提示し、後につづく研究に筋道がつけられるように努める所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では中国カウンターパートとの共同研究(調査)の形を想定し、現地調査と資料収集に力を入れることを目指して動き出したが、話し合いの中で高額の経費や機材の要求、また資料を外に公表することへの警戒心などが生じ、また震災で動きが停滞したこともあり、共同研究が必ずしも順調に進まない状況が生まれた。また研究分担者の学内業務の多忙化も研究の遅れを招いた理由となっている。代わりに別ルートからのカウンターパートの設定や、調査の手法や中心を移動させる方法を試みているが、当初の予定の遅れは否めない。
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今後の研究の推進方策 |
(1)房山石経研究:日本側で資料の全容把握はほぼ終わり、その結果は中国国家図書館側に示してある。平成23年度末の話し合いで当方の求めるデータの提示が内諾されている。それができると資料集と研究の遅れを取り戻すことが可能になるが、これとは別に中国仏教協会所蔵資料調査についても話を進め、ここからも進展をはかる予定。 (2)山西仏教石刻研究:これも山西省文物関係者との交渉のこじれがあり、停滞の理由となっているが、すでに別途のルートからの調査を手掛けており、また対象を長治地区に絞ること、河北〓から太原へのルートぞいの仏教石刻の調査、山西文献の全調査による石刻所在目録作成などにより、ほぼ当初の目的が達成できると考える。 (3)四川仏教石経研究:当初予定した灌県霊岩山仏教石経の全調査は、保存の状況から不可能であることがわかった。なお調査の可能性を追求するが、結果は不明である。ただしこの研究が目指すのは、唐代四川地域の仏教の特色・独自性を仏教石刻を通じて明らかにすることにあり、並行して手掛けてきた安岳その他の石刻の調査研究をさらに進展、総合することで、灌県の問題をカバーできると考えている。
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