研究概要 |
「近代国家の形成」という西欧学界の現代的課題へ貢献することを目途として、中世後期のブルゴーニュ国家―それは南北2つの大きな所領ブロックから成る―を素材に、社会・経済・文化諸領域の統合的な究明を図るのが本研究の目標であった。最終年の2012(H24)年度には、連携研究者および研究協力者の協働により、学術論稿(著書・論文・書評等)の成果を以下の通り充実した形で実現することができた。 第1に主要論稿から列挙するならば、領域・法・統治システムの分野で、河原温「シャルル・ル・テメレールと15世紀後半ブルゴーニュ宮廷の政治文化―宮廷イデオロギーの形成をめぐって―」『人文学報』(首都大学東京) 2013年3月、齋藤絅子「中世エノー伯領における共同体の「自由」と制定法」『駿台史学』第147号, 2013年1月を得た。また、都市・市民・国家の領域からするアプローチとして、畑奈保美「15世紀フランドル都市ブルッヘの市民登録簿」『ヨーロッパ文化史研究』第14号, 2013年3月、花田 洋一郎「中世後期フランスにおける都市議事録研究の成果と課題―最近の研究から―」『比較都市史研究』第31巻第2号, 2012年6月、齋藤絅子「中世エノー伯領の都市の自由―商業流通と領主権力―」『明治大学人文科学研究所紀要』第73号, 2013年3月、 以上の研究成果には、「資料の徹底した収集と整理に力を注ぐ」とした、海外調査結果(藤井:ベルギー)も含まれている。 第2に、学会等における研究発表については、青谷秀紀・加来奈奈による計3件のそれが、前年度に引き続き特筆する業績となっている。 以上、主要な成果に絞って記したが、本研究の今1つの特徴であるブルゴーニュ国家の南北各ブロック分担研究により、3年間の予定研究期間全体を通じて、均衡の取れた業績結果となっていることを最後に強調しておきたい。
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