研究課題/領域番号 |
22320158
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
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キーワード | 銑鉄生産 / 箱形炉 / 送風孔 / 吸炭 |
研究概要 |
平成23年度は、平成22年度に実施した復元実験成果を検討し、製鉄遺跡の発掘成果と比較検討を実施したうえで、復元製鉄炉を設計し、平成23年10月、愛媛大学において築炉して、操業実験を行った。平成22年度の復元実験では、〓(鋼主体)が生成でき、銑鉄はわずかに生成した程度であった。そこで、実験後の炉内状況を観察すると、炉壁内面の熔融状況から送風孔付近の温度が十分に上昇していないことがわかった。また発掘された製鉄炉の炉壁を再度検討し、送風孔の間隔をより短くする必要性があることを確認した。ただし、送風孔の角度については、深い角度、浅い角度のいずれを取るべきか、課題として残った。そこで、平成23年度の復元実験炉は、愛媛県今治市高橋佐夜ノ谷遺跡(7世紀後半~8世紀前半)の箱形製鉄炉をモデルとし、粘土床で、送風孔間隔を昨年度よりも短くして行うこととした。課題として残した送風孔の角度に関しては、箱形炉の半分を浅い角度、半分を深い角度とし、炉内環境を比較することとした。その結果、銑鉄が生成し、送風孔の角度が浅い方でより多い銑鉄ができることを記録することができた。たたら製鉄の技術を記録した俵国一著『わが国古来の砂鉄製錬法』(1931年)にも、銑押し用の製鉄炉では送風孔角度が浅いと記録されているが、そのことを追認することとなった。しかし、その理由に関しては、技術書には記載されていないため、復元製鉄炉の解体結果を基に検討を進めている。製鉄実験を指導した木原明氏(国選定保存技術保持者)によれば、炉内での原料砂鉄の落下速度が遅ければ、砂鉄の吸炭が十分にでき、銑鉄が生成しやすくなると、実験中に所見を頂いた。製銑のための条件を数多く得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
考古資料、技術書の情報、そして昨年度の実験成果を総合的に検討し、その結果を活かした実験で、銑鉄生産に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
古代段階の製鉄炉に関しては、製銑のための条件を解明することができた。ただし、平成23年度の実験では、炉内環境を二つに分けたため、製銑の条件として良好であった送風孔の浅い角度をすべての送風孔に採用して、復元実験を行いたい。また、わが国の製銑炉には東日本を中心に分布する半地下式竪型炉も、中世には消滅するが、製銑を可能としていた。この半地下式製鉄炉が駆逐される理由は、生成される銑鉄に違いがあるからではないかという仮説をいだくにいたり、箱形製鉄炉と併行して、半地下式製鉄炉に関しても、検討を行い、復元実験を試みたい。
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