研究課題/領域番号 |
22320158
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 古代製鉄 / 銑押し法 / たたら / 実験考古学 |
研究概要 |
平成24年度は、古代箱形炉を採用した銑鉄生産実験と半地下式竪型炉を採用した銑鉄生産実験を実施し、箱形炉と半地下式炉の性能比較に重点を置いた研究を実施した。 箱形炉については、平成23年度に愛媛大学で実施した箱形炉の操業実験の際、銑鉄生産に適した条件として判明した送風口の角度、送風口の間隔・高さを生かして長さ約1m、高さ1.3mの箱形炉を設計した。復元実験は平成24年10月12日~14日の間、岡山県新見市、新見荘たたら伝承会の中世たたら高殿で実施した。砂鉄は真砂砂鉄、木炭は例年通り、出雲さんのたたら炭を使用した。その結果、吸炭性の高い黒色の流出滓の生成後、銑鉄の流出を確認した。ただし、平成23年の実験時のようには連続的な流出は見られず、炉内でより多い銑鉄が固結している可能性が高い。 一方、東日本において7世紀後半から9世紀にかけて製鉄炉の主体となる半地下式竪方炉の復元実験を平成24年9月20日~22日の間、福島県福島市内において実施した。製鉄炉の復元モデルとして国史跡横大道遺跡(福島県)の遺構を参考にしたことと、原料を遺跡出土品と同様の在地産を選んだこと、そして半地下式炉を設置可能な適地があったことが実習地選択の理由である。復元の結果、まず特筆すべきは半地下式竪形炉の構築がきわめて短時間ででき、合理的な炉である点である。また炉内温度の上昇が早く、箱形炉の比ではないことも判明した。一方で、煙突効果で炉頂部から強い上昇風が起こるため、原料の砂鉄が舞い上がるデメリットもある。これは原料の投入に際し、当時においても何らかの工夫が行われたことが想定された。この点を改善して、さらに銑鉄生産のための半地下式竪形炉の復元に取り組む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古墳時代から古代の規模の製鉄炉に関しては、遺跡からの情報を反映しながら銑鉄生産のメカニズムもほぼ理解でき、復元実験においても銑鉄が生産できるようになった。 問題はたたら成立前の中世段階における規模の製鉄炉で、安定した銑鉄生産ができるかどうかである。規模が大きくなる分、炉内環境のコントロールも困難であり、またその規模のため頻繁に実験することもできない。 たたらの技術書の内容を再度検討し、また無形文化財を含む製鉄技術保持者とのさらなる議論が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
箱形製鉄炉の規模を中世段階のそれに近づけ、現行の古代復元炉の1.5倍の規模にし、銑鉄生産を目指す。遺跡の発掘成果に基づく情報はもちろんであるが、たたらの技術書の内容を再度検討し、また無形文化財を含む製鉄技術保持者とのさらなる議論を重ね、実験準備を行いたい。 また東日本における銑鉄生産炉である半地下式竪型炉に関しても復元実験により多くの所見を得た。問題の原料投入法に関して再検討を行い、この竪型炉に関してももう一度復元に取り組み、その性能の把握と技術的特徴を完全に掌握したいと考える。
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