研究課題/領域番号 |
22320158
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | たたら製鉄 / 銑押し / 実験考古学 / 製鉄炉 / 鉄滓 |
研究概要 |
前年度に実施した製鉄復元実験の検討成果を受けた今年度の実験打ち合わせ(5.6月)後、前年度実施の製鉄炉を解体し、検討会(9月)を実施した。その成果を受け、10月には岡山県新見庄中世たたらにおいて古代製鉄炉を復元創業した。今年度の復元炉は、俵国一著『日本古来のたたら製錬』(丸善、1933年)に記録された銑押し炉の情報を最大限に活かし、岐呂穴(送風孔)の高さと角度をその情報に忠実に再現した。その結果、炉況は良好のまま製鉄を継続したものの、送風孔と炉床の距離が近すぎたため、炉床を熔損し、精製した銑鉄が炉床に潜るという現象があることを突き止めた。過去の実験成果によれば、炉送風孔の角度は俵記録通りで問題ものの、炉床からの高さに関しては、炉のサイズ(全長・幅)に応じた調整が必要であることがわかった。最終年度の実験において、その点を反省しつつ、銑鉄の炉外流出を目指す良好な必要条件を把握できた。また、同時に操業された新見主催する中世たたらについても積極的に参加し、大型製鉄炉における銑押しの問題点についても検討した。炉底に生成した大鉄塊は、最上層に吸炭の進行した鉄板の集積があり、その下に滴状の鉄塊(銑玉)が沈下し、その下部に銑鉄塊が生成するという状況を呈し、銑鉄生成のプロセスが明確に観察された。しかしながら、小型の古代炉と同様、炉外への銑鉄の流出にはいたっておらず、その理由が把握できなかった。この鉄塊については次年度の炉底解体の際に取り出されることとなっており、その際に詳細な観察を実施することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
成果の公開については、復元実験中、製鋼会社社員や一般見学者に対して実施し他ものの、当初予定していた昨年度末の公開が実施できなかった。この点が(2)と評価する理由である。来年度はこの点を補う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は最終年度であり、前年度の成果を受けた最後の復元実験に取り組む。その成果をたたらの国選定保存技術保持者(木原明氏)や金属分析研究者とともに討論し、銑押し法に関する技術的特質について成果をまとめ、今年度実施できなかった成果の公開を行う計画である。
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