当該研究の最終年度に当たり、これまでの復元実験の成果を検討し、木原明氏(国選定保存技術保持者<玉鋼製造>)を含む研究協力者との意見交換を実施した。その成果を受け、2014年10月、岡山県新見市備中国たたら伝承会実験場において製鉄炉(愛媛大学20号炉)を復元し、銑鉄生産を目的とした操業実験を行った。製鉄炉の大きさは全長80㎝、幅50㎝、高さ120㎝であり、古代の製鉄炉の中で小型の規模である。昨年度の19号炉では送風孔の角度を10度とし、送風孔の高さを炉内で7㎝に設定したが、この高さでは炉底にかかる熱が高く、浸食しやすいことが判明していた。そこでこの20号炉では送風孔の角度はそのままで、高さを9~10㎝とした。その結果、炉外に連続して銑鉄を流し出すことができた。原料に関しては俵国一著『わが国古来の砂鉄製錬法』(1933)にも記録されているように、真砂砂鉄と赤目砂鉄(高チタン、海川混合砂鉄)の混合原料の使用が最適であることを追認した。真砂砂鉄投入の位置については、炉内壁を熔損させないような投入法があることを木原氏の技術の中に見いだすことができ、過去の記録にはない所見となった。送風孔の角度・高さ、炉床の堅さの重要性とともに、記録に遺されていない多くの技術を駆使して当初の目的である銑鉄を炉外に連続して生産することができた。金属学的分析の結果、生産した銑鉄は良質の白銑であることも判明した。製鉄遺跡の情報から復元した炉で銑押し技術を復元するという当初の目的は達成できた。
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