研究概要 |
1.熊本県地域の首長墓に関する基礎データの整理および研究史上の問題点の抽出。 熊本県地域に築かれた首長墓系譜の変遷について現段階での見解をまとめた。そして本研究の今後の展開に備えるため,編年や地域性を考察するうえで鍵となるが,出土資料が未報告のままとなっている古墳を抽出し,研究史上の問題点を整理した。 2.阿蘇地域の古墳に関する基礎データの収集・整理および現地調査の開始。首長墓と在地墓制が混在するがその様相がほとんど不明の阿蘇地域に着目し,当該地域の古墳に関する基礎データを集め,古墳および出土資料の現状を実地に調査した。本来ならさらに1つの古墳群をケーススタディとして測量・発掘調査の実施に研究を進める予定であったが,種々の事情により本年度は断念した。次年度に期したい。 3.阿蘇市長目塚古墳1949・50年調査出土遺物の再整理作業の開始。 阿蘇地域最大の前方後円墳,長目塚古墳からかつて出土した遺物を阿蘇神社から借用し,鉄器についてはX線撮影および実測作業,土器・埴輪については接合・実測作業を進めた。ほかに熊本県教委保管の当該古墳出土埴輪の実測作業も進めた。 4.熊本県地域出土の鉄製武器・武具に関する調査の継続。 古墳時代中期に焦点を当てて研究を進めるという目的から,従来から行っていマロ塚古墳に関する共同研究と関連させ,熊本県地域出土の中期甲冑について調査した。とくに,未報告の高森町高塚横穴群出土横矧板鋲留短甲を見出した点は特筆される。
|