1.熊本県阿蘇市平原古墳群6号墳の墳丘発掘調査を実施し、その成果に関する発掘調査報告書を刊行した。 平原古墳群の考古学的調査は平成23年度に測量調査、平成24年度には6号墳の墳丘発掘調査を実施した。今年度の調査はそれらを受けたもので、6号墳墳丘の3箇所にトレンチを設け墳丘構造の確認を行った。その結果、墳形は円墳で直径30~31mのほぼ正円をなすことが明らかとなり、2段築成の墳丘に施された葺石が良好に遺存することもあらためて確認された。また築造時期は古墳時代前期後葉から中期前葉であると考えられたが、それ以上時期を絞り込むまでには至らなかった。この点に今後の課題を残すが、近接する中通古墳群や迎平古墳群などと合わせて阿蘇地域を考察するための良好な基礎資料が得られた意義はきわめて大きいといえる。 2.熊本県阿蘇市長目塚古墳1949・1950年調査出土遺物の調査・分析を終了した。長目塚古墳の築造時期はこれまでにも様々に議論されてきたが、今回、墳丘出土の埴輪、須恵器、土師器、および前方部石室の副葬品を総合して考察した結果、古墳時代中期中葉のうちでも早い段階であると結論づけられた。 3.研究協力者により、遺構では「八代海沿岸を中心に分布する天草砂岩を用いた埋葬施設」、「有明海・八代海沿岸の箱式石棺・石障系石室」、「須恵器を副葬する古墳」についての、また遺物では「熊本県地域の長頸鏃」、「長目塚古墳出土のガラス玉」、「天草式製塩土器」、「阿蘇市域出土の赤色顔料」についての調査・分析結果がまとめられた。なかでも、天草砂岩を用いた埋葬施設が網羅的に集成された点は重要で、有明海・八代海沿岸地域の古墳動向分析にとって貴重な基礎データが提示されたといえる。 4.上記の2・3をまとめ、さらに今後の研究を展望した総括報告書を出版した。
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