研究課題/領域番号 |
22320165
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研究機関 | 北陸学院大学 |
研究代表者 |
小林 正史 北陸学院大学, 人間総合学部・社会福祉学科, 教授 (50225538)
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研究分担者 |
北野 博司 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (20326755)
鐘ヶ江 賢二 鹿児島国際大学, 付属博物館, 助手 (00389595)
田畑 直彦 山口大学, 埋蔵文化財資料館, 助手 (20284234)
庄田 慎矢 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部(飛鳥・藤原地区), 研究員 (50566940)
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キーワード | スス・コゲ / 土器痕研究 / 深鍋 / 縄文・弥生深鍋 / 調理方法 / 炊飯方法 / 土器機能研究 |
研究概要 |
土器の機能研究の方法を確立することを目的として、「ワークショップ形式でのスス・コゲ観察会(7回開催)」、「伝統的(薪と土鍋による)調理方法のノーハウを教えてもらうための東南アジア稲作農耕民の調理民族誌の調査」、「調理実験」、「調理方法との関連からみた深鍋の成形方法の分析」の4つを行い、以下の成果が得られた。 まず、縄文深鍋の上半部コゲには「横倒し時のオキ火上加熱痕」が主体を占めることが明らかになり、縄文深鍋の多くは、盛り付け終了後、「直立状態での、オキ火による下半部のこびり付きの空焚き乾燥」→「オキ火上に転がすことによる上半部のこびり付きの空焚き乾燥」という2段階を経ることが示された。この事実は、洗い落ちにくい「澱粉粉(ナッツ類)+油脂(肉・魚)」の組み合わせが多かったことを示す。 第二に、「3~4リットル付近の谷部を境に小型と中型に作り分けられ、中型は大半に胴下部喫水線下コゲが付くのに対し、小型は胴下部コゲ頻度が低い」という使い分けが九州の弥生早期深鍋にも認められたことから、飯の重要性が弥生初期から高かったことが明らかとなった。東北タイとラオス南部における調理民族誌の調査(12月後半~1月中葉)では、東南アジアの湯取り・法炊飯に「側面加熱を伴う蒸らし」が組み合うことが確認されたが、西日本では弥生早期から高い頻度で側面加熱痕が付くことから「炊き上げる湯取り法」炊飯が想定された。 第三に、東北地方の中型弥生深鍋は、側面加熱痕を欠く代わりに、吹きこぼれ後も強火加熱が継続する点で、西日本の炊飯方法とは異なっている。精米度が低い(玄米に近い)可能性と、硬い穀物(大麦?)や芋などを混ぜたカテ飯の可能性が考えられる。また、西日本に比べて上半部の被熱が強いため、「喫水線が高め(肩部以上)に位置する」という炊飯の特徴が検証された。 最後に、北部九州の弥生前期深鍋の断面薄片分析により、(1)折り曲げ技法により口頚部の括れを作り出すこと、(2)粘土帯の外傾接合であること、が明らかにされ、(2)の背景として「粘土帯を上下に伸ばして接着を強める技法」が想定された。 なお、ワークショップでのテキストとして『土器使用痕研究;スス・コゲからみた縄文・弥生土器、土師器による調理方法の復元』を製作した(2011年3月末)。
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