調理民族誌の比較分析と複製土鍋による調理実験という2種類の基礎研究を踏まえ、土鍋の形・作りから推定される「製作時に意図された機能」、および、スス・コゲから復元される「実際の使い方」の2面から、縄文~古代の調理方法の復元を試みた結果、以下の点が解明された。第一に、弥生~古墳中期までの炊飯方法は「吹きこぼれ直後に鍋を傾けて湯取り⇒オキ火上転がしによる側面加熱蒸らし」という手順をとる湯取り法であり、粘り気の弱い米品種を用いた。第二に、粘り気の強い米品種への交代が完了した中世では、炊き干し法で炊かれた。第三に、両時代の間の古代では蒸し米が主食だったが、その理由として「粘り気が弱い米品種から粘り気の強い米品種への交代・並存期だったため、どちらの品種にも対応できる蒸し調理が選択された」という仮説が提示された。
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