研究課題
A班(都市の消費文化)では、日本最古のデパートである三越所蔵の近代のPR誌を全頁撮影し、研究メンバーで共有した。その他、消費文化の歴史的展開を明らかにするため、百貨店、スーパーマーケットの社史や社内報、PR誌、営業案内などを収集し、研究会全体の基礎データとした。さらに昭和に入ってから消費に占める女性の役割が大きくなるため、婦人向け雑誌や化粧品・トイレタリー用品・ファッション関連の会社社史、社内報などを収集した。また消費生活の受容という側面から、長野県須坂市の田中本家の消費構造を明らかにするため、購入した商品や関連の文書の調査を行った。さらに政府統計や企業アンケートの結果などを用いて、家族構成や住居形態、職業、余暇時間の利用法など全体的な流れを押さえることとした。その上で、結婚から葬儀に至るまでの様々な家族生活や人生儀礼が商品化の波に取り込まれていった様子について調査をおこなった。B班(地方文化の商品化)では、屋久島と白神山地の観光について観光客が激減していることがわかり、現在の地域社会への影響について緊急に調査した。その結果は、青木が「世界自然遺産の保護と観光化の諸問題」として報告している。屋久島については、屋久杉の商品化について工芸家数件を訪ね、材料となる土埋木の入手方法や製品の作り方などを把握した。アイヌ観光については、アイヌ民族の表象のされ方について、古い絵葉書や写真、学術書などを収集・整理した。絵葉書は大量に発行されており、なかにはフィクションと思われるものが少なからずあり、慎重な分析を要することが判明した。炭坑と製鉄業を中心とした近代化遺産は、新旧の絵葉書や写真、会社案内、社史、労働組合史などを収集して、景観変化の様子を明らかにし、事業の変遷や労働者の生活変化、その後の文化財保護活動との関連が次第に判明している。さらに戦跡関連の資料は長崎に多く、沖縄に少ないという特徴が判明した。
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國學院大學紀要
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