(1)概要 一年目の2010年度は、研究環境を整えることと、分析視覚を充分に特定することを目指して、資料収集と研究会を重ねた。また、討論の過程で固まった研究視覚を基礎として、実質的な調査を開始した。更に海外の研究者との討論を通じて、これまでの研究の成果を発表するとともに、二年目以降の課題としていた作業についても、一部前倒しで行った。 (2)環境整備 資料取集が中心となった。内外の先端的業績を収集した外、自らの作業の学問的な位置づけ、とりわけそれが歴史学・法学の大きな流れの中で如何なる意義をもつかの検討に必要となった古典的文献及び史学史・法学史に関わる文献の充実に努めた。更に、香港・英国・米国において特に中国的な企業体の歴史的生成過程についての一次資料を収集している。 (3)分析視覚の確定と作業の開始 東京と札幌で行った研究会において各自の報告及び文献講読を行って検討した結果、中国における日本を含む外国企業による企業買収の分析を行うことの有用性及び中国における政府間関係(中央政府・省政府・市政府の間の関係)のダイナミクスとの関係で生ずる実務上の問題の理解の重要性を確認した。こうした見通しのもと、先ずは中国進出を果し現地でのM&A実務に関わる幾つかの日本企業を主たる対象として、特に、これらの諸政府と密接な(三権分立を前提としない)関係を有する裁判所が如何なる役割を果すか、といった諸問題につき松原と石本茂彦(研究協力者。森・濱田松本法律事務所パートナー)の両名が具体的な事例分析研究を開始している。 (4)ヴェトナムにおける企業・団体の形成についての研究の開始 2011年度以降開始の予定であったヴェトナムとの比較研究につき、松原がフランスでの中国法制史研究会及び香港でのヴェトナム社会史研究会に招待され、資料収集及び海外専門家との討論の機会を得たことにより、一部前倒しで検討を開始した。
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