研究課題/領域番号 |
22330010
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
紙野 健二 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (10126849)
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研究分担者 |
市橋 克哉 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40159843)
高橋 祐介 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50304291)
大河内 美紀 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (20345838)
林 秀弥 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (30364037)
豊島 明子 南山大学, 法務研究科, 准教授 (10293680)
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キーワード | 契約化 / 公害防止協定 / 保育委託契約 / 法治主義 / 第三者のためにする契約 / 契約的手法 / 行政法と民事法 |
研究概要 |
初年度に当たる今年度は、社会保障および環境保全の行政領域において、主として行政によって用いられている厳密には契約に当たらないような協定を含む契約的手法の制度および運用を調査し、既に明らかとなっている論点の確認や潜在すると考えられる論点の掘り起こしを試みた。研究分担者が個別に調査検討を行うとともに、3度の全体研究会を開催した。 今年度の研究の特徴は、契約的手法に対して行政法学を含む諸法学から分析を試みる場合の、それぞれが把握しようとする問題群と問題把握の表現形式とを確認するところから研究活動を開始したことである。例えば、公害防止協定を規制的行政活動の一種と認識して、法律条例で協定の根拠を定め、内容を限定づけ、および手続を整備すること、つまり行政と法治主義という問題把握をなす行政法学と、協定の性質を第三者のためにする契約と表現して住民による協定に対する関与を肯定する場合の民法学との共通点と相違点とを確認して、そののちに諸法学なかでも行政法学において従来必ずしも十分には論じられていなかった諸課題を発見しようと試みた。このような共同研究は、契約的手法または契約化と称されている諸現象に対して、対象を同じくするものの異なる地点からの視差(parallax)を用いることによって、これらを法律学的に、かつ、総合的に表現するという意欲的なものであり、またこれは、諸法学の排他性を克服しこれらが協働する方向性を有すると同時に、それぞれの相対的な固有性を再発見しうるという意義を有するものである。ただし、現時点では、本研究は端緒的な段階にとどまっている。最終年度における諸法学の差異の統合(総合)に向けた基礎理論の形成のために、次年度においては諸現象それ自体の検討のみならず、これらに対する各法学の観点からの法律学的な、このような意味でのより立ち入った分析が不可欠となる。
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