研究課題/領域番号 |
22330010
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
紙野 健二 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (10126849)
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研究分担者 |
市橋 克哉 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40159843)
下山 憲治 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (00261719)
高橋 佑介 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50304291)
豊島 明子 南山大学, 法務研究科, 准教授 (10293680)
岡本 裕樹 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (90372523)
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キーワード | 行政契約 / 自然環境保全協定 / 財政的支援の法的統制 / 住民参加 / 介護サービス契約 / 直接契約の権力性 / 法治主義と情報提供手法 |
研究概要 |
昨年度の研究成果を活用して行われた、研究期間の2年目に当たる今年度の研究は、主として、環境保全および社会保障の両行政領域において展開している広義の行政契約の現象形態を調査して、これらの特徴と問題点とを明らかにしようと試みたものであった。研究代表者および研究分担者による個別の研究活動の成果を確認しつつ全体の共通理解を得るべく、2011年7月および2012年3月に、全体の研究会が開催された。研究活動を強化するために新たな研究分担者が追加された環境法研究グループにおいては、一定の研究の蓄積がある公害防止協定の制度および裁判例の調査・分析のみならず、本研究の目的である、価値創造(将来に向けての自然環境の創造)のための里山などの自然環境保全協定の調査が行われた。また、社会保障法研究グループにおいては、高齢者介護の直接契約(私人間の契約)が有する(事実上の)一方性(権力性)を緩和するための制度である介護サービス情報の提供制度が調査の対象となった。これらの両行政領域における素材に即して、契約法研究グループおよび基礎理論研究グループから、それぞれの問題提起が行われて、研究代表者および研究分担者全員による多面的な観点からの検討が行われた。いずれの行政領域においても、(NPO等の里山保全の主体に対する、また高齢者介護を行う主体に対する)「支援」へと行政の機能が変化している。これらのような行政の機能変化を生ずることとなった構造の認識やこれに規定されつつこれへの適応が試みられている行政の評価とともに、法律学においては、行政の機能変化が生ずる法的諸問題の把握が、ありうる一検討課題である。この2年間の研究活動を通じて、論じられるべき問題の内容は、研究代表者および研究分担者において、かなり明確に把握されるようになったように思われる。最終年度に当たる次年度においては、2年間の研究の各自によるまとめとともに、全体の統合が行われる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、環境保全および社会保障の両行政領域に即して、これらの行政領域において展開する広義の行政契約が生じている法的諸問題を、主として行政法の法分野において、考察するものである。今年度においては、行政法の観点からは従来必ずしも十分に調査研究が行われていなかった自然環境保全のための協定や介護サービス契約の調査が行われて、これらの調査活動によって明らかとなった行政の機能変化の把握が試みられた。環境法研究グループおよび社会保障法研究グループの調査活動と契約法研究グループおよび基礎理論研究グループとの相互作用が本研究の特色であるが、このような特色を有する調査研究活動は、現在までおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
環境法研究グループおよび社会保障法研究グループの調査活動によって明らかとなった諸問題を、行政領域の多様性に即しつつ、行政契約論一般および行政契約論を包含する基礎理論の次元において考察することが、今後の研究において必要となる作業である。
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