研究課題/領域番号 |
22330016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小寺 彰 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (80107490)
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研究分担者 |
塚原 弓 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (50282512)
玉田 大 神戸大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (60362563)
林 美香 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (60362810)
伊藤 一頼 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (00405143)
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キーワード | 国際公法 / 国家責任 / 責任 / 制裁 / 履行確保 / 違法性 / 義務違反 / 権利侵害 |
研究概要 |
本年度は、大きく二つの目的をもって二度研究会を開催した。第一の目的は、本研究を進めるに当たって共有すべき知見及び問題意識の確認である。国際法を含め、あらゆる法分野で語られる「責任」という概念は、ローマ法から展開していった概念であるため、国際法における「責任」概念の特徴を明らかにするためには、ローマ法の「責任」概念の知見を共有しておくことが有益である。第一回目の研究会では、そうした観点から、ローマ法上の「責任」概念について東京大学の木庭教授にご教授いただいた。そして、第二回目の研究会では、その冒頭、研究代表者の小寺教授より、本研究の問題意識が示された。すなわち、「国家責任」の普遍化と多様化が進む中、「国際法上の国家責任」をどう捉えるべきかを実証的に明らかにするというとき研究の目的、および、研究を進めるに際しては、(1)国際違法行為を「義務違反」と捉えることの意味、(2)国際法適合性を確保するための多様な条約上の仕組みと国家責任法上の救済手続きとの関係、の二点を考慮すべきであることが確認された。この二点は、それぞれ「国家責任」の普遍化及び多様化に対応する論点であり、これまで自覚的に論じられてこなかった「国家責任」という概念を分析するための柱となる視点を共有することができた。 そして第二の目的は、こうした知見及び問題意識を前提に、各個別の分野の研究を進めることである。国家責任における「違法性」に関する西村准教授の報告では、国際違法行為=国際義務違反という現在の理解について、権利侵害を義務違反と捉えることの歴史性及びその妥当性への疑念が裁判判例の紹介とともに示された。また、藤澤准教授による行為の帰属に関する報告では、行為の帰属の問題が、国家によるコントロール可能性と賠償・制裁可能性という二つの視点で論じられてきたことが明らかにされた。さらに、WTOにおける「責任」についての阿部准教授の報告では、特別法としてのWTO法の特殊性が示され、参加者の間で、WTOが特別法であるということは国家責任法上どのような意味を持つつのかという問題意識が共有された。
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