研究課題/領域番号 |
22330016
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小寺 彰 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (80107490)
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研究分担者 |
塚原 弓 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (50282512)
玉田 大 神戸大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (60362563)
林 美香 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (60362810)
伊藤 一頼 静岡県立大学, 国際関係学部, 講師 (00405143)
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キーワード | 責任 / 国家責任 / 賠償請求 / 救済 / 戦争 / 投資仲裁 / 人権 / 環境 |
研究概要 |
本プロジェクトは、国際法の多様な分野のそれぞれにおいて「責任」がどの様に実現されているのかを検討したうえで、個別分野を超えて妥当する一般国際法上の「責任」を観念しうるのかを明らかにすることを目的としている。プロジェクトを通じて、各研究者は三回の報告を行い、その成果を共有する機会を与えられているが、今年度までに第一巡目の報告を終え、研究の筋道をつける作業を完了させることが出来た。 具体的には、6、7、11月開催の研究会において、救済、武力紛争、軍縮、投資保護(6月)、第一次大戦以前の「責任」概念、国際裁判手続と責任概念、領域管理責任(7月)、人権、環境、違法性阻却事由、第一次大戦以降の「責任」概念(11月)に関する報告が行われた。そこでは、原状回復が原則と考えられている責任の帰結につき、リーティングケースでは懲罰の要素も加味されていたことが明らかにされ、民事的な救済をベースに考えられてきた国家責任法上の救済を捉え直す視座が獲得された。また、武力紛争の文脈ではILC国家責任条文と異なる帰属規則が妥当しているのではないか、追及される責任の性質に鑑みて投資仲裁をどう性格づけるべきかといった問題意識が共有された他、歴史的に国家責任には賠償請求の根拠と戦争の根拠という二つの考え方が存在したことが確認され、賠償請求の根拠としての責任という現在の一般的理解が相対化された。更には、国際裁判において責任追及とそれ以外の請求原因がどのように使い分けられているのかといった問題や、領域管理責任における「責任」の意味、手続違反を根拠とした差止請求の可能性、アカウンタビリティ概念と責任概念の異同、国家責任法の一般原則性の起源等が議論され、今日の通説が包摂しきれていない国際法上の「責任」の多義性を認識することができた。 また、今年度に発売されたEncyclopedia of Public International Lawを購入し、第二巡目の報告に向けた準備態勢の一端を整えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、今年度までに一部の研究者が第二巡目の報告に入っている予定であったが、昨年度の東日本大震災の影響で予定していた研究合宿が中止となったため、一巡目の終了で今年度の終了を迎えた。しかし、今年度も研究合宿を行う予定であり、この遅れは十分回復できる範囲のものである。
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今後の研究の推進方策 |
今度の推進方策として、研究計画の変更を迫られる程の重大な問題は存在しない。今年度は、研究合宿に加え、研究会を二度行う予定であり、第二巡目の報告の終了及び、研究の最終段階である第三巡に一部の研究者が入ることができる見通しである。
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