1.本研究は、地域住民の生活保障と多機関連携(ローカル・ガバナンス)のあり方について学際的・多面的な考察を行うことを目的とする。研究の最終年度においては、先年度および当年度に行った各種調査の分析・検討を継続するとともに、全体の総括的な議論を重ね、以下の知見を獲得した。1)地方分権の現状を歴史的な背景において総括するとともに、現状における政府間関係のあり方を理論的に把握することに努め、それぞれの政府は地域住民のいかなるニーズに応えるべきか、あるべき役割分担について一定の見通しを得るに至った。2)基礎自治体の議会議員アンケート調査の分析を通じて、地方自治体における二元代表制の一翼を担う議会がどのように地域社会の住民と接点を保ちつつ、その利益の集約を通じて、首長・行政と対峙しているのかが具体的に明らかになった。3)要介護認定業務をめぐる複層的な調査の結果から、社会的包摂に向けた多機関連携の具体的様相、とりわけ多様なアクター間の双方向的コミュニケーションの実情およびその規定要因が解明された。4)今後の地域経済にとって重要な意味を持つ外部からの投資について、機関投資家の「社会的責任投資」の観点から分析を行い、「地域の利益」をめぐる機関投資家の認識と実際の投資行動との間にはなお検討すべき課題があることが確認された。 2.以上の研究成果を踏まえて、地域住民の生活保障をめぐる行政・議会・コミュニティ組織・非営利協同組織・営利企業等の多様なアクター間の連携・役割分担の具体的あり方について、研究成果を引き続き発信していく予定である。
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