研究課題/領域番号 |
22330022
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研究機関 | 西南学院大学 |
研究代表者 |
有田 謙司 西南学院大学, 法学部, 教授 (50232062)
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研究分担者 |
石田 眞 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80114370)
石橋 洋 熊本大学, 法曹養成研究科, 教授 (70176220)
唐津 博 南山大学, 法務研究科, 教授 (40204656)
古川 陽二 大東文化大学, 法学部, 教授 (10199432)
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キーワード | 1871年労働組合法 / 労働組合 / 労働者(workmen) / 1875年使用者・労働者法 / 労働者(worker) / 1906年労働争議法 / 1971年労使関係法 / 雇用契約 |
研究概要 |
平成23年度の研究においては、比較法研究の対象国であるイギリスについて、労使関係(労働組合)法制の適用対象を画する「労働者」の概念の形成史を明らかにした。イギリスでは、1871年に労働組合法が制定され、労働組合が合法化された際、労働組合の定義を定める規定において、その構成要素として「労働者(workmen)」という言葉が用いられたが、そこでは「労働者」の定義はなされなかった。1875年には、争議行為に刑事上の免責を定めた、共謀罪・財産保護法の制定とともに、使用者・労働者法が制定されたが、それは、これまで労働者の契約違反を制定法たる「主従法」等において刑事罰の対象としていたものを廃し、一般契約法理と同じく民事責任に限定するものであった。両法の関係は、使用者・労働者法が、共謀罪・財産保護法による(免責という方法による)争議「権」の承認を背後から支えるものと評されるものであるところ、そのような使用者・労働者法において、「労働者」の定義が定められ、それに関する裁判所の解釈が示されていく中で、「労働者」性の判断基準として「その者自身による就労」基準が形成された。この基準は、雇用契約(contract of employment)概念が、制定法たる「主従法」の間隙を縫って形成されつつあった時期において、雇用契約を判断する際に掛酌される基準の1つとして現れてきたものであったが、これが用いられることによって、この基準を満たしていれば、自らの労務の提供について補助する者を雇用し、その者に賃金の支払いをしているといった請負契約により就労している者であっても、「労働者」と判断されうるものとしたのである。このようにして、「労働者」には、「その者自身による就労」が認められる請負契約による就労関係にある者も含まれるものとなった。これが、19O6年労働争議法による「労働者」の定義規定を経て、「その者自身による就労」を要件とする「労働者(worker)」概念の形成へとつながった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究成果として刊行時期が明確なのものは、研究代表者のものだけであるが、研究分担社の研究成果は記念論集に掲載予定となっているため、刊行時期が未だ定まらないところであるが、研究自体は、研究会等における報告をみると、おおむね順調に進んでいるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
比較法研究の対象国であるイギリスについての研究をさらに進めるため、平成24年度はイギリスから研究協力者を1名ないし2名招聘し、ミニシンポジウムのようなものを開催する。その成果を基礎としながら、わが国の戦前における労働組合法案をめぐる議論をたどり、「労働者」概念の形成と「労働契約」概念の形成との関連についての研究をさらに進めることとする。
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