研究課題/領域番号 |
22330024
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
葛野 尋之 一橋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (90221928)
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研究分担者 |
本庄 武 一橋大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (60345444)
武内 謙治 九州大学, 法学研究院, 准教授 (10325540)
正木 祐史 静岡大学, 法務研究科, 教授 (70339597)
岡田 行雄 熊本大学, 法学部, 教授 (40284468)
中川 孝博 國學院大學, 法学部, 教授 (40330352)
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キーワード | 少年 / 裁判員 / 刑事 / 裁判 / 家庭裁判所 / 公判前整理手続 / 判決前調査制度 / 鑑定 |
研究概要 |
第1に、奈良、大阪、名古屋、東京、千葉において、少年事件の裁判員裁判の弁護人となった弁護士の聞き取り調査を数件実施し、捜査手続から家裁の調査・審判、逆送決定後公訴提起までの手続、公判前整理手続、裁判員の参加する公判審理、被害者参加、判決、上訴などにわたり、アクチュアルな問題を把握した。聞き取り調査後、問題を整理し、解決のための方向について意見交換をした。同様の目的から、具体的ケース報告の行われる日弁連・子どもの権利委員会・全国付添人経験交流集会、近畿弁護士連合会シンポジウムなどに積極的に参加した。 第2に、対人援助専門職ネットワーク研究会に参加し、研究協力者である精神科医や元家裁調査官である研究者との研究会を実施し、少年事件の裁判員裁判をめぐる問題について検討した。とりわけ、家裁の社会調査の現状、家裁の社会記録の取調べ方法、犯罪心理鑑定の意義、専門家証人意見の取調べ方法について、実務の現状を踏まえて討論を行った。また、名古屋調査においては、少年事件の裁判員裁判に(裁判所命令による)鑑定人、弁護人申請の専門家証人として関与した元家裁調査官にインタビューを行い、情状鑑定や専門家証言・意見書における調査方法、証拠化・取調べ方法の実際について調査した。 第3に、アメリカ調査を実施し、少年事件の刑事裁判について特別部の特別手続を推進した元裁判官、系統的研究を遂行した研究者にインタビューを行い、また、少年審判、刑事裁判の傍聴を行った。元裁判官、研究者とは今後の研究遂行における協力関係を形成することができた。 第4に、これらの研究活動と並行し、積極的に研究成果の発表を行った。研究分担者の岡田行雄は、単著研究書『少年司法における科学主義』(日本評論社、2012年)を上梓し、代表者・分担者全員が研究論文を発表し、その多くが学会報告などの形で口頭発表を行った。代表者・分担者のうち4人が、国際犯罪学会、アジア犯罪社会学会という国際学会においても、全体会招待基調報告、テーマ・セッション「判決前調査の国際比較」の企画、テーマ・セッションにおける報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を蓄積させつつ、各人が積極的に研究成果を発表するというサイクルが順調に回転している。このなか、国際犯罪学会、アジア犯罪学会、アメリカ調査などの機会に、国際的な研究発表を行い、研究協力を進展させることができた。また、少年事件の裁判員裁判における実務との接点を重視しつつ、精神医学や対人援助専門学との学際的交流を反映させた研究書の出版企画も始動させた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)総括:国内調査や文献研究から明らかになった問題点を系統的に整理し、その全体像を明らかにしたうえで、各参加者が問題を分担し、それについての理論的検討を行い、法的問題の法解釈学的解決策とともに、その限界を踏まえた立法提案を行うための作業を進める。(2)研究成果の発表:学術雑誌、大学紀要などに研究成果を論文として発表する。国内学会(犯罪社会学会、法と心理学会)、国際学会(アジア犯罪学会)において、研究成果を口頭報告する。これらに対して得た反応を検討し、(1)の理論的検討にフィードバックする。(3)総括的研究成果の発表準備(1)の総括的理論研究の成果をまとめ、研究書として出版する準備を進める。国内調査を中心とする実証研究、精神医学・心理学・教育学との学際的コラボレーションという本研究の特色を生かすものとする。
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