本研究は児童虐待の問題に対しトータルな児童虐待防止・児童保護システムを構想することを目指しており、平成22年度は特に虐待された児童の処遇、ケアについて重点的に検討した。 (1)研究会の開催1年を通し7回開催された研究会では、厚労省職員、弁護士、医療関係者、警察関係者、法律家等様々な分野の方を講師として招き、児童保護について現状把握と、問題の整理に努めた。これまで児童虐待については介入段階での研究は多くなされているが、介入後のケアの問題、児童の処遇の実際、なかでも児童福祉施設、司法面接、一時保護所等、法律家を交えての研究がほとんどなされていない領域について、福祉的、法律的、医学的な視点から問題を検討できたことは非常に意義深い。 (2)国内調査国内では児童相談所、一時保護所、乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設、情緒障害児短期治療施設等合わせて11か所の施設を訪問し、各施設の現状に加え、実際の制度や法律の運用について調査した。深刻で複雑な問題を抱える児童を受入れる施設はそれぞれに独自の文化とノウハウを持ち、日々起こる様々な問題の対応に追われているという状況の理解は深まったが、これに対して法律や制度はどのように支援できるのか、具体的対策については次年度さらに検討する必要がある。また里親制度との比較において、施設ならではのケアがあり、ケースによっては里親よりもむしろ施設入所が適切でありうるという視点を持つに至ったことは、脱施設化の傾向の進む現在において、非常に重要な調査であったと言える。 (3)国外調査イギリスの教育省、里親機関、病院内にある虐待対応機関等を訪問し、多機関連携の実情を調査した。また里親制度については基準や規則の明確化、サポート体制の充実等我が国における現在の里親制度に不足する点についてある程度具体的に整理できたことは次年度からの研究に非常に役立つ結果となった。
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