研究概要 |
平成24年度は、我が国の社会的養護についての基礎知識を獲得するために、社会的養護に関係する専門家を招いて研究会を行った。 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 総務課 虐待防止対策室の高松室長補佐には「社会的養護に関する行政説明」についてお話頂き、我が国の社会的養護制度に関する全体的な説明を得た。NPO法人日向ぼっこ理事長の渡井氏からは、児童養護施設における待遇、施設退所後のケアの必要性など、主に、児童養護施設に関する諸問題についての話を伺った。キーセットダイレクターの渡邊守氏からは、我が国の里親制度の現状、里親推進のための取組、研修などについて話を伺った。 さらに、子ども虐待について、経済的視点から、特に「社会的コスト」として分析する研究を行った。このようなコスト研究は諸外国では行われているが、我が国では本研究が初めてとなる。特に、厚生労働省の発表によれば、公的な責任としてケアされる制度である社会的養護利用児童は約46,595人に及ぶなど、子ども家庭福祉領域において大きな問題となっている。研究結果からは、2012年度における我が国の虐待コストは、16,028億円であり、東日本大震災における福島県湾岸部(地震そのものの被害だけでなく原発による避難等も含む)の被害額1.9兆円(寺崎、2011)に近い額であることが明らかになった。各国で社会的コストの研究が進んだ背景には、子ども虐待に予算や人員をかけること、つまり子どもに資源を投入することが結果として将来の莫大な損失を防ぐという知見の存在がある。我が国でも、今後、政策として虐待の長期影響を測定するシステムが必須であると考えられる。
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