研究課題/領域番号 |
22330038
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
宮澤 節生 青山学院大学, 法務研究科, 教授 (60001830)
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研究分担者 |
久保山 力也 青山学院大学, 法務研究科, 非常勤講師 (00409723)
武士俣 敦 福岡大学, 法学部, 教授 (30190169)
藤本 亮 静岡大学, 法務研究科, 教授 (80300474)
上石 圭一 追手門学院大学, 社会学部, 教授 (80313485)
石田 京子 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (10453987)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 弁護士 / 法科大学院 / 司法修習 / 即独 / 弁護士過疎地 / 女性弁護士 / 専門分化 / 階層構造 |
研究概要 |
平成24年度は、平成23年1月~2月に実施した第1回郵送調査で回収した621名の第62期弁護士(回収率62.9%)について、二変量分析から多変量分析へと進め、その成果を公表するとともに、郵送調査回答者の中で面接調査にも同意した67名に対する面接調査を進めることを目標としていた。 第1回郵送調査の分析成果は、平成25年3月に上海で開催された第3回東アジア法社会学会で発表した後、青山法務研究論集(平成25年3月発行)に200ページの報告書として公刊した。 その主たる分析項目は、下記のとおりである:(1)法科大学院での学修経験と司法試験準備;(2)司法修習;(3)登録遅延、職場変更、即独・独立採算、大規模事務所勤務、及び弁護士過疎地勤務の決定要因;(4)業務分野と専門分化;(5)所得、職業満足度、及び将来不安の規定要因。 最も重要な知見としては、(1)いわゆる「即独」「軒弁」を選択する要因、(2)弁護士過疎地を選択する要因、(3)ジェンダーという要因のインパクト、(4)出身法科大学院、とりわけ東京大学法科大学院出身であることのインパクトなどを挙げることができる。 これらのうち、とくにジェンダーについては、結婚は男性弁護士に対しては所得面で否定的インパクトを与えないのに対して、女性弁護士に対しては有意に否定的な影響を与えており、女性弁護士のワークライフバランスが今後も追跡研究に値するテーマである。出身法科大学院については、東京大学法科大学院出身者が、就職地(東京)、所属事務所規模(大規模)、顧客類型(大企業)、所得(最高水準)などの点で突出しており、アメリカについて指摘されているような、弁護士の社会的背景、出身ロースクールのランク、所属事務所規模、顧客類型、弁護士界内部での威信などが不可分に結びついた階層構造の萌芽とみられるかどうか、やはり追跡調査すべきである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1回調査は、平成23年1月~2月に実施した郵送調査と、その後、回答者の一部(67名)に対して実施することになった面接調査によって構成されている。 このうち、郵送調査に対する統計分析は順調に進んでおり、二変量解析から多変量解析に進んだ第2報を、青山法務研究論集第6号(平成25年3月)に掲載した。 しかし、調査票の自由回答部分に関するデータは、なお分析中である。また、面接調査は、質問の統一性を維持するため研究代表自身が全員を面接する方針を採用したため、北は札幌から南は奄美大島までの広範囲をカバーすることになり、まだ、最後に残った関東地方の弁護士に対する面接を継続中である。 ただし、いずれも今年度前半に終了する予定であり、今年度末(平成26年1月~2月)に予定している第2回郵送調査の実施には支障がない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、平成26年1月~3月に第2回郵送調査を行うことが最終目標となる。そのため、平成25年12月までは、第1回調査の分析結果を発表することと、第2回郵送調査の準備を、並行して進めることになる。 第1回分析調査の出版については、日弁連法務研究財団の叢書として、商事法務研究会から出版することを考えている。そのため、早急に構成・分量・分担などを決定し、11月末を目途に執筆する予定である。 第2回郵送調査の準備としては、まず調査項目を決定し、それに対応した調査票を作成しなければならない。第1回郵送調査で取り上げた項目は、(1)法科大学院での学修経験と司法試験準備;(2)司法修習;(3)登録遅延、職場変更、即独・独立採算、大規模事務所勤務、及び弁護士過疎地勤務の決定要因;(4)業務分野と専門分化;(5)所得、職業満足度、及び将来不安の規定要因などであるが、第2回郵送調査では、(3)のうち職場変更、即独・独立採算、大規模事務所勤務、及び弁護士過疎地勤務の決定要因などと、(4)業務分野と専門分化、(5)所得、職業満足度、及び将来不安の規定要因などについて、第1回郵送調査以後の3年間にどのように変化したのか、変化したとすればどのような要因が寄与したのか、解明すべきことになる。また、新たな検討課題としては、個人顧客分野であれ、企業顧客分野であれ、新たな業務分野に進出する者が増えるかどうか、増えたとすれば規定要因はなにかという課題が考えられる。また、全体に作用する規定要因としては、ジェンダーと出身法科大学院が引き続き作用しているかどうか、作用しているとすれば何らかの変化があるか、データを修習すべきである。 調査方法については、回答率を、第1回調査の約30%から引き上げる方策を検討したい。
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