本研究の目的は、「国家ブランディング」(nation branding)という枠組みに基づいて、対日イメージをどのように改善できるか、その結果どのような効果が得られるのかを、主として中国と日本におけるフィールド調査やテキスト分析などの実証分析を通して検討することにある。申請者の過去の研究では、中国において日本製品の評価は高く、強いブランド力も認められたが、反日感情やナショナリズム感情などが日本製品の購買意図に負の影響を与えていた。一方で日本においては中国ブランドの評価はきわめて低いが、そこにも対中感情がある程度影響を与えているとみられる。中国ではこういう事態を改善するためにソフトパワーの強化を目指した政策も導入している。日本の政策関係者からはアニメをソフトパワーに活用することが提唱されているが、申請者の研究結果では必ずしも予期した効果をもたらすとは限らないことが示されている。いずれにしても、国家ブランディングを目的とした政策効果についての先行研究は乏しい。本研究計画において本年度は計画の初年度なので、国家ブランディングに関する文献収集、各国の日本の観光ガイドの収集などを行った。さらに、日本語、英語、中国語のプログについても収集し、実際に内容分析を始めている。また、日本人の対外意識構造を探るため、探索的なアンケート調査も実施した。ただし、まだ研究計画の一年目ということもあり、これらのデータの分析はまだ途中であり、研究発表も行っていない。ところで、昨年度末に発生した東日本大地震とそれに伴う原発事故によって、日本プランドのブランド力は大きく毀損したとみられる。平成23年度は、以前の研究計画においては想定していなかった原発事故の悪影響を測定することを目ざした実証研究を行いたい。
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