本研究の目的は「国家ブランディング」(nation branding)という枠組みに基づいて、対日イメージをどのように改善できるか、その結果どのような効果が得られるのかを、主として中国と日本におけるフィールド調査やテキスト分析などの実証分析を通して検討することにあった。国家ブランディングを目的とした政策効果についての先行研究は乏しく、日本の政策関係者からはアニメをソフトパワーに活用することが提唱されているが、申請者の過去の研究結果では必ずしも予期した効果をもたらすとは限らないことが示されていた。まず、Twitterについて関連する発言を収集し内容分析を行った。また、日本、米国、韓国、台湾、香港でアンケート調査を実施し、国家ブランドイメージとポピュラーカルチャーの接触などに関する測定をおこなった。これらの調査では、社会心理学で提唱されているステレオタイプの二次元モデルとマーケティング研究で提唱されているブランド拡張モデルおよび原産地効果のモデルを国家ブランディングの問題に対して統合的に適用することを目的とした。このデータを分析することによって従来は、一次元的にとらえられていた国家ブランディングの効果を多次元的に理解し、日本にとって優位な方向性を探ることができるものと考えられる。その成果の一部は、国際学術誌(Place Branding and Public Diplomacy)に既に掲載されている。また、ポピュラー文化への接触がどのような国家イメージの改善と結びつくのかについても検討することにしたい。これらの調査結果に基づき国家イメージに含まれる次元と国家ブランディングの方向性との関係、日本のポピュラー文化の接触の効果などについて論じる。最終的には日本の「国家ブランディング」(nation branding)はどういう方向を目指すべきなのか、対日イメージをどのようにすれば改善できるか等の問題を検討することを目指したい。
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