研究課題
初年度の主な活動として、資料収集を進めるとともに、2010年8月に台湾に出張して馬英九総統ほか15のインタビューを行い、8月に張冠華・中国社会科学院台湾研究所副所長を招聘して「両岸経済協力枠組み協定(ECFA)から見た大陸の両岸経済発展政策」をテーマとした講演会・研究会を実施し、10月には、伊藤信悟・みずほ総合研究所調査本部アジア調査部上席主任研究員を招いて「ECFAの日本への影響」と題した講演会を行い、翌年1月に「五都選挙の分析と今後の台湾政治」と題した研究会を行い、メンバーの小笠原欣幸が報告者を、松田康博・松本充豊がコメンテーターを務めた。そして、これらの活動に関する記録を197頁からなるワーキングペーパーにまとめた。ECFAの締結は、台湾の馬英九政権による対中国大陸宥和政策が新たな段階を迎えたことを意味する。一連の調査活動により、以下の諸点が浮かび上がってきた。(1)中国はECFAをテコにして台湾の経済的・政治的抱き込みを図ろうとしているが、台湾住民の民意には明確なプラスの政治的効果が見られない。(2)馬英九政権は、「ECFA効果」により経済成長が確保され、馬再選への道筋が着くことを期待しているが、一連の選挙では苦戦続きであり必ずしも決定的な政治的効果は見られない。(3)野党の民主進歩党は、馬政権が中国に接近しすぎであり、ECFAが台湾の利益にならないことを強調していたものの、その具体的内容が台湾に有利であることが明らかになり、大陸との経済関係深化への反対路線が政権奪回の足かせとなりつつある。このように中台経済関係が深化する趨勢にあることは明らかであるが、そのことは必ずしも中台の政治的統合に資する効果を生んでいない。他方で中国は急速な軍拡を進めている。このように、中台間の経済的な結びつきの政治的効果は、直線的な台湾独立路線がより困難になった以外、いまだ明確に説明できる状態になく、2年目には理論的な考察が必要とされる。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (14件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (6件) 図書 (1件) 備考 (3件)
外交
巻: Vol.1 ページ: 68-75
Gerald Curtis, Ryosei Kokubun, and Wang Jisi eds., Getting the Triangle Straight : Managing C hina-Japan-US Relations, New York : Japan Center for International Exchange
ページ: 123-143
日米中トライアングルー三力国協調への道-(王緝思、ジェラルド・カーティス、国分良成編)(岩波書店)
ページ: 99-118
日米同盟プラスの新たな安保戦略を
巻: 6368号 ページ: 124-126
『台湾史研究』(中央研究院台湾史研究所)
ページ: 81-112
膨張する中国の対外関係-パクス・シニカと周辺国(天児慧・三船恵美編)(勁草書房)
ページ: 185-236
Srikanth Kondapalli and Emi Mifune eds., China and its Neighbours, Pentagon Press (New Delhi)
ページ: 48-85
アジアにおける大統領の比較政治学-憲法構造と政党政治からのアプローチ(粕谷祐子編著)(ミネルヴァ書房)
ページ: 83-111
アジアの政治経済・入門[新版](片山裕・大西裕編)(有斐閣)
ページ: 113-137
法政研究
巻: 第77巻第1号 ページ: 177-193
アジアの産業発展と技術者(佐藤幸人編)(アジア経済研究所)
ページ: 3-26
ページ: 63-101
アジ研ワールド・トレンド
巻: 第185号 ページ: 40-47
現代中国経済論(加藤弘之・上原一慶編)(ミネルヴァ書房)
ページ: 259-277
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ogasawara/paper/mayingieou2.html
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/ogasawara/analysis/fiveitieselection2010c.pdf
http://www.tufs.ac.jp/ts/personalogasawara/paper/mayingjeou3.html