研究課題
本研究は、プロダクト型イノベーションの普及のメカニズムを定量的に明らかにし、その普及によって生み出される経済的・社会的な価値を測定することを目的とした。2008年秋の世界金融危機後、日本を始め先進国での需要不足が深刻化する中で、新たな需要を掘り起こすような新製品や新技術の創出・普及が望まれている。しかしながら経済学の分野において実証的にプロダクト型イノベーションの普及に着目した分析は、その技術的な難しさもあり研究が出遅れている状況にある。ここでは構造型推定手法を用いることで、こうした技術的な課題の克服を試みると同時に、3つの新製品・新技術を事例として取り上げて実証分析を行うことで、補助政策の役割や補完財の重要性など、普及に影響を与える様々な要因の定量的インパクトも明らかにすることを目的としている。研究計画初年度にあたる平成22年度においては、本研究にて取り上げるプロダクト型イノベーションを選定することからはじめた。文部科学省科学技術政策研究所にて実施された「科学技術振興による経済・社会・国民生活への寄与の定性的評価分析」(NISTEP Report No.80,89)にて言及されている310の技術リストを吟味し、太陽光発電、脂質異常症治療剤、高精細度デジタルテレビ(HDTV)技術という3つの技術を取上げることとした。その上で、3つの選定技術の1つである太陽光発電について、データ収集を開始し合わせて構造推定を用いるためのモデル構築を行った。より詳細な分析は平成23年度に引き続き行われることになるものの、太陽光パネルの技術的な特性とその学習効果の存在について配慮をしつつ、都道府県別のデータを用いて、太陽光発電の普及の現状を需要及び供給の側面から解明をするモデルを作成し、今後はデータとのマッチングを行う作業に入ることにしている。
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時局
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