研究概要 |
本年度は研究初年であり、地域医療に関する医学、経済学、看護学等分野横断的な見解と先行研究の調査を実施した。また、海外における地域医療の概念と政策的動向についても、中国、米国などを中心に聞き取りなどにより情報収集をおこなった。並行して、東京、京都、大阪、福岡、熊本等におけるこの数年間の地域医療体制の変遷(医療機関ベースでの動向)について、医師や看護師、有識者に対する聞き取りを頻繁に実施し、その内容を反映して今年度後半では「地域医療に対する意識と資源整備に対する住民の支払い意志」に関するアンケート調査を実施した。この調査から、1)人々にとっての「地域医療」が、単に地理的特性としての地域ではなく、医療ニーズへの的確な対応という枠組みで認識されていること、2)子供の疾患、またガンなどの成人病疾患を持つ人々ほど、このような医療の適切性に対して強いsensitivityを持っていること(WTP値に対する高いオッズ比で示された)、3)医療費に対する高齢者の反応は、従来言われているほどネガティブではなく、むしろ価格と質との均衡関係の欠如感が医療費負担増に対する態度として表明されている可能性があること、等が明らかになり、地域医療を構築する際の資源の在り方について重要な示唆が得られた。 上記アンケート調査のデータを用いて、今年度研究成果としては、1)「時間外受診の費用に関するWillingness-to-pay計測」を研究協力者と共同執筆し、また2)What is the optimal health insurance scheme for aged society?Primitive analysis for seeking real premium in Japanese new social health insurance for the agedを研究代表者名で執筆した。なお前者は日本医療・病院管理学会に発表予定であり、また後者は10^<th> International Conference on Health Economics, Management and Policy in Athensにて報告予定(採択済み)である。
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