研究課題/領域番号 |
22330082
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研究機関 | 政策研究大学院大学 |
研究代表者 |
北野 泰樹 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (70553444)
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研究分担者 |
久米 良昭 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (60316643)
福井 秀夫 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (60251633)
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キーワード | イノベーション / 知財政策 / 政策評価 |
研究概要 |
本研究は、イノベーション促進のための国・地方自治体による知財関連政策の評価を行うことを目的としている。本年度の成果は以下の通りである。 (1)知的財産研究所とNBERの特許データベースを用いて日本企業の特許の価値分布測定のための推定プログラムを作成した。 (2)公的研究機関の直接技術開発や、企業に対する研究開発支援やベンチャー等開業支援などの補助・融資、産業クラスター整備等の集積支援政策などの自治体が導入してい知財関連施策についての基礎資料作成を行った。 (3)以下の2つの市場を対象に特許以外のイノベーション評価を行った。 (1)携帯電話市場を対象に、新サービスの導入(プロダクトイノベーション)が与えた影響を評価した。具体的には、2006年導入の番号ポータビリティ(MNP)制度が消費者に直接与えた便益に加え、制度導入による企業間の競争促進効果も考慮した分析を行った。分析の結果、企業への影響を考慮したMNP制度導入の便益は消費者一人当たり43-47円程度であり、携帯電話市場の大きさを鑑みると、MNP制度は大きい便益をもたらした政策であることを示した。 (2)自動車市場を対象に、重要な政策であるエコカー減税・補助金という環境対応車の普及促進政策がもたらす便益とこれら政策に係る論争の評価を行った。本研究では、これら政策を考慮した構造推定モデルを用い、政策が環境対応車の普及への貢献度合と、政策が各企業の利潤に与えた影響を明らかにした。加えて、これら政策が偽装された保護主義政策、即ち国内企業に有利となる設計であるというアメリカの批判について、アメリカが代替案として提示するエコカー認証基準と現行の基準が達成する環境対応車の普及効果に着目し、考察した。分析の結果、アメリカ案は現行の基準よりも同程度の環境対応車の普及に要する補助金額が大きく、少なくともアメリカ案との比較の観点からはこれら環境政策は偽装された保護主義政策には当たらないという結果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特許データの分析についての論文はまだ学会などで報告が出来てはいないが、環境政策関連の論文は当初の予定より早く、年度内にドラフトを完成させ、学会発表を行うことが出来ている.その他に執筆した論文については査読付学術誌への投稿を行っているものもあり、概ね順調に研究が進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの学会報告等で、多数の論文に対するコメントをもらっている。重要なコメントとして、環境政策の論文における政策評価の基準として、2つのエコカー認証基準のみに注目するだけでは不十分であることを指摘するものがあるが、このコメントについては追加のシミュレーションを行うことで対応可能である。論文は改訂後にディスカッションペーパーとして発表し、査読付学術誌への投稿を進めたい。
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