経済成長の実現には、イノベーションが絶え間なく起こる社会を創造する必要がある。本研究課題では、イノベーション促進のための国及び地方自治体による知財関連政策の評価を行うことを目的とている。これまで、政策評価のためのイノベーションの価値測定を実施し、それを用いていくつかの政策分析を行ってきた。本年度は特に、震災以降の環境問題への高まりを考慮し、環境政策とイノベーションの問題を中心に研究を進めた。 本年度の成果としてはまず、北野(2012)において、プロダクトイノベーション評価に不可欠な需要関数の推定方法について、競争政策の評価手法とともにまとめた点があげられる。論文では、需要関数の基礎的な推定に係るいくつかの問題点を挙げた上で、それらを解決するための計量経済学的な手法、またいくつかの離散選択モデルのクラスについて、基礎的な内容から応用事例までを含め、説明を行っている。本成果は、政策評価、イノベーション研究を行う多くの研究者、また実際の政策担当者にとっても有用なものと考えられる。加えて、こうした分析手法を用いて日本の自動車市場におけるいわゆるエコカー補助金、エコカー減税などの環境政策評価に関する論文をまとめ、国際学会(EARIE 2012 Rome)他、産業組織研究会(東京大学)など,国内の研究会・セミナーで数多く報告した。また、本研究課題における一つの重要な特徴として、学際的な研究を行う観点が挙げられる。こうした視点を踏まえ、法と経済学の研究として、日本の自動車市場で実際に問題となったエコカー補助金に係る日米間の貿易摩擦の問題について、WTO制度における貿易政策と環境政策に関連する議論とともに北野(2013)にまとめた。
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