研究課題/領域番号 |
22330084
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
利 博友 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 教授 (40283460)
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研究分担者 |
板倉 健 名古屋市立大学, 経済学研究科, 准教授 (90405217)
大槻 恒裕 大阪大学, 大学院・国際公共政策研究科, 准教授 (40397633)
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キーワード | FTA / シークエンシング / 産業調整 / アジア / CGE分析 |
研究概要 |
平成23年度は、平成22年度に構築した11地域・26部門の動学的CGEモデルを22地域・29部門に拡張し、TPP(環太平洋経済連携協定)をFTAシークエンシングのシナリオに追加した。また、サービス産業の非関税障壁の調査を行い、8つのサービス業において従価税換算値をデータベースに組み込んだ。 1)環太平洋経済連携協定(TPP)から日本・韓国・カナダ・メキシコを含めた拡大TPP、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)へと進展するシナリオ、2)ASEAN+3FTAからASEAN+6FTA、FTAAPへと進展するシナリオ、及び3)2と同じシークエンシングの下、ASEAN+3FTAの発効が2013年から2017年に遅れるケースを想定し、その影響を評価した。 域内貿易比率が低い二国間FTAと比較して、TPP、ASEAN+3、ASEAN+6、FTAAPなど相対的に高い域内貿易比率のFTAを中心にしたシークエンシングでは、アジア諸国の経済厚生が比較的大きく上昇するが、特にシナリオ2で経済厚生の上昇率が高い国が最も多いことが明ちかになった。シナリオ1は、アジア諸国の経済厚生の上昇率がシナリオ2と比較してやや低いが、東アジアFTAの設立が不確実の現状のなかで最も現実的なシナリオである。東アジアFTAの発効が遅れる場合(シナリオ3)では、メンバー国の経済厚生の上昇率が低下することが示された。産業調整度については、3つのシナリオの中で著しい違いは見られなかったが、早い時期に高い域内貿易比率のFTAに加盟することで構造調整コストを比較的小さく抑えることができることが示された。 これらの結果は、東アジアFTAの交渉が始っていない中、現在交渉中のTPPに日本・韓国などが順次加盟し、FTAAPへと進展するシナリオが望ましいことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年度~平成23年度の2年間で、「研究の目的」の約3分の2が達成されている。動学的CGEモデルの構築と拡張は順調に進んでおり、これまでに得られた結果は、今後の地域統合・FTA政策に比較的重要なインプリケーションを持つことが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成22年度に構築し、平成23年度に拡張した22地域・29部門の動学的CGEモデルを最新のデータにより再構築する。製造業の非関税障壁の調査を行い、従価税換算値をデータベースに組み込む予定である。また、FTAが拡大-統合することにより、原産地規則(ROO)によって生じるコストが低下する影響をモデルに取り入れる予定である。最新のデータにより再構築したモデルによって得られた結果を取りまとめ、研究成果を国際学会で発表し、査読付きジャーナルに投稿する予定である。
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