本研究は、医療・介護両制度の一体改革を進める上でベースとなる、高齢者の住まいのあり方について検討している。なかでも、①地域における医療・介護サービスの利用実態、②高齢者の住まいの現状と課題、③地域ケアの現状と課題を分析し、④その介護保険財政への影響を検討することを主眼とした。 22年度から24年度までに、①については医療・介護レセプトから高齢期の医療介護費用の実態を把握した論文をベースに討論し、共通認識を確認した。②について制度上複雑に入り組んでいる高齢者向けの住宅制度を整理し、現状の整備数などの実態を把握した論文を作成した。さらに、わが国で今年度実施予定の高齢者住宅政策について検討し、問題点を指摘した。 ③については、高齢者住宅の整備及び地域ケア体制の構築において先進国であるデンマークを訪問し現地調査を行うとともに、その成果を論文にまとめた。さらに、包括的な高齢者住宅の品質管理手法を採用している米国を訪問し、関係省庁にヒアリングを行い、その日本への示唆を含めて論文にまとめた。また、フィンランドを訪問し、高齢者住宅の監督官庁に医療介護政策に関するヒアリングを実施した。これらの研究により、高齢者住宅の現状把握、地域ケア体制の構築手法、地域ケア制度における高齢者住宅のあり方については十分な検討をすることができた。 ④については、将来の医療介護費用の財政負担を市町村単位でシミュレーションした論文を参考にして検討した。併せて、政府財政のひっ迫を踏まえて、民間保険による費用負担のあり方についても検討し、日本での公私財源の活用方法に関する論文を作成した。 上記の研究結果を踏まえて、一般向け図書である「地域リハビリテーション白書3」(三輪書店)に、住宅政策から見た地域包括ケア体制に関する1節を寄稿し、研究成果の普及に役立てた。
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